※ 最終更新: 2026年7月。本記事は号数別・地域別の年収実態を、国土交通省「公共工事設計労務単価」・警察庁・厚生労働省の公的データを軸に整理する。公的単価は公共工事積算用のベンチマークであり、警備員個人の手取り賃金そのものではない点に注意したい。

警備員の平均年収は、国土交通省『公共工事設計労務単価』2026年版で交通誘導A(資格者)が全国平均18,911円/日、月22日勤務換算で年約499万円(前年比+5.8%、8年連続上昇)。ただしこれは発注側の積算用単価で、実際の手取り額は各社の給与規程・地域・雇用形態・夜勤比率で変動する。求人ポータル(求人ボックス・Indeed)の集計値と公的統計値では出所と集計方法が異なる。本記事では 民間集計と一線を画した公的統計・業界一次情報 を軸に、警備員の年収実態を読み解く。


警備員の平均年収はいくらか|公的統計サマリー

まず結論を先に整理する。「警備員の年収」を語るデータソースは大きく分けて 2 系統あり、それぞれ性質が異なる。

データソース対象2026年目安特徴
国土交通省『公共工事設計労務単価』交通誘導A(資格者)全国平均18,911円/日 = 年約499万円公共工事積算用の統一基準、地域・業務別に毎年3月公表
国土交通省 労務単価交通誘導B(A以外)全国平均16,749円/日 = 年約442万円資格の有無で年約57万円の差
厚労省『賃金構造基本統計調査』警備・守衛業界横断の実収入分類別で異なる民間全数調査、実際の給与水準
求人ポータル集計値掲載求人票の平均平均約380〜420万円レンジと言われる自社掲載求人の偏り反映、時点差あり

出典:国土交通省 令和8年3月公共工事設計労務単価、警察庁「警備業の概況」、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」。詳細な年次推移は 2026年労務単価発表レポート、8年トレンドは 労務単価8年推移 を参照。


警備員の年齢階層別構成グラフ|60歳以上47.0%(警察庁データ)

警備員の年齢構成(年収を考える前提)(出典:警察庁・国土交通省/編集部整理)

号数区分(1〜4号)別の年収傾向|労務単価との対応

警備業務は警備業法によって4つに区分されており、業務内容・配置基準・報酬水準の傾向が異なる。号数の全体像は警備業の4つの業務区分で整理している。

号数主な業務年収レンジ目安(公的単価ベース)特徴
1号施設・常駐警備約280〜450万円施設グレード、夜間・宿直比率で変動
2号交通誘導B(無資格)約370〜420万円全国平均基準、地域差大
2号交通誘導A(資格者)約440〜550万円検定2級以上、配置義務の現場で有利
3号貴重品運搬高めの傾向(要確認)検定保有、輸送物の特殊性
4号身辺警護上限が広い専門スキル、案件性質

※ 公共工事設計労務単価ベースの目安。民間案件・各社給与規程で実際の年収は変動する。出典:2026年労務単価発表レポート。号数別配置警備員数は警備業務区分別の構成費比較、配置基準の法的根拠は警備業法の基礎を参照。

1号(施設警備)の年収特徴

求人数が多く未経験からエントリーしやすい分野。同じ1号でも、金融機関・データセンター・官公庁のような高グレード施設と小規模倉庫の夜間警備では報酬水準が異なる。夜間・宿直シフトの比率、警備員指導教育責任者などの上位資格保有で役職手当が加わる構造。

2号(交通誘導・雑踏警備)の年収特徴

労務単価の対象業種で、公的統計と実収入の連動が最も明確。交通誘導警備業務検定の有資格者は「A区分」として単価が上がる。イベント・工事の繁忙期(夏の公共工事シーズン・年末)に案件が集中し、シフト数で年収が伸びる。

3号・4号の年収特徴

3号(貴重品運搬)・4号(身辺警護)は専門スキル・資格が求められる少数派の業務区分で、上限が広い傾向がある。具体的な年収は会社規模・案件性質で差が大きく、公的統計だけでは実態把握が難しいため、業界内の実務情報を併読する必要がある(身辺警備業務検定貴重品運搬警備員検定)。


資格取得と年収の関係|A・B単価差の実態

警備員資格の「経済価値」を最も客観的に示すのが、国土交通省の労務単価における A(検定2級以上または同等経験者)/B(A以外) の区分だ。資格保有が公的単価に直接反映される唯一の例で、年収差の目安になる。

交通誘導A (円/日)交通誘導B (円/日)A-B差月22日勤務換算 (円)年換算 (円)
202416,96114,909+2,052+45,144約+54万円
202517,93115,752+2,179+47,938約+58万円
202618,91116,749+2,162+47,564約+57万円

3年連続で年換算50万円以上の差が公的単価に存在する。8年分の推移・読み解きは A vs B賃金差から見る警備員資格の経済価値 で解説した。各社の給与規程では、この差が「資格手当」「配置単価差」として個別に反映される(金額は会社による)。

業務検定2級・1級の手当相場

各号数の業務検定は2級・1級の2段階。多くの会社で月次の資格手当として加算されるが、金額は就業規則によって異なる。求人票の「資格手当」欄で確認するのが確実(各社就業規則)。有資格者は配置義務のある現場に優先アサインされやすく、手当以外でも収入増につながる可能性がある。検定合格者数の業務別内訳は 警備員検定合格者数の経年推移 を参照。全体像は警備員の資格一覧で整理している。

警備員指導教育責任者は管理職への入口

警備員指導教育責任者は警備業法が定める事業所ごとの必置資格。取得すると管理・教育業務を担う役職に就きやすくなり、役職手当が加算される。現場から管理側へのキャリアシフトの起点となり、長期的な年収改善の道筋となる(給与差は会社・地域で異なるため転職・昇格交渉時に要確認)。


雇用形態・夜勤の年収インパクト

雇用形態別の年収構造

雇用形態によって年収の積み上げ方が根本的に異なる。

  • 正社員:基本給+各種手当(資格・役職・夜勤)+賞与。収入基盤が安定
  • 契約社員・パート:時給または日給ベース、シフト数と夜勤比率が年収を直接左右
  • アルバイト:スポット案件で単価は高めの場合があるが、福利厚生・手当が薄い傾向

年収基盤の安定という観点では正社員が有利になるケースが多いが、掛け持ちが可能なアルバイトで積む選択肢もある。

深夜割増は号数・資格を問わず全員に法定適用

労働基準法第37条第4項では、午後10時〜午前5時の深夜時間帯に働く場合、通常賃金の2割5分以上の割増が義務付けられている(2026年7月時点、最新は厚生労働省・e-Govで確認)。

施設警備の24時間常駐や夜間の交通誘導案件では深夜手当が積み重なり、日勤のみのシフトと比べて年収が大きく変わる。宿直勤務の扱いは深夜割増と異なる場合があるため、契約内容の確認が必要。警備員の労働環境実態 も参考にしたい。


地域別の年収差|労務単価が示す実態

警備員の収入は地域による差が大きい。背景は都道府県ごとの最低賃金差と警備需要の違い。国土交通省「公共工事設計労務単価」の都道府県別データが最も客観的な指標になる。

主要県の労務単価ベース年収換算(2025年)

主要県2025年 交通誘導A (円/日)月22日勤務換算年換算全国平均比
愛知県20,900459,800約551万円+10.6%
東京都20,200444,400約533万円+7.4%
静岡県20,200444,400約533万円+7.4%
神奈川県19,900437,800約525万円+5.8%
大阪府18,900〜約415,800〜約499万円〜全国平均近辺
福岡県16,600365,200約438万円-11.7%
沖縄県15,300336,600約404万円-18.6%
高知県15,100332,200約399万円-19.7%
全国平均17,931394,482約473万円

出典:国土交通省「令和7年3月から適用する公共工事設計労務単価」都道府県別表。全47都道府県データは 警備労務単価47県インデックス に集約している。

愛知が首位の理由は 愛知が労務単価トップの理由、地域格差の構造は 警備の都道府県別単価格差はなぜ広がるか で解説している。


編集部の見立て|年収データが業界に示す構造課題

ここまでは公的統計に基づく事実の整理。KEIBI-Labの編集部視点として、これらの数字が業界のどんな構造課題を映し出しているかを整理する。

高齢化46%が単価上昇を後押しする構造

警備業界の60歳以上比率は 47.0%(警察庁データ) に達し、業界全体で人手不足が加速している。この構造下で、労務単価が8年連続で上昇(2018→2026で+38.2%)してきた背景がある。詳細は 警備業界の高齢化46%レポート警備員数と人手不足の正体 で整理した。

編集部の見立て:単価上昇が続くこの局面では、資格者・経験者の単価上昇余地がさらに広がる可能性が高い。個人の視点では資格取得のROIが構造的に高まっているタイミングと言える。

労務単価上昇と手取りの実質還元度

公的単価は年5〜6%で上昇しているが、警備員個人の実収入への還元率は業界内で議論が続く論点。労務単価は「発注側の積算基準」であり、警備会社の粗利・下請け構造・経費配分を経て初めて警備員の給与に反映されるため、単価上昇=手取り上昇とは限らない。業界の元請下請構造は 警備業の元請下請構造 で整理している。

地域格差1.38倍の意味

同じ資格者でも愛知と高知で日額5,800円の差が生じる構造は、警備需要と地域経済の非対称性を映している。都市部への人材流出、地方の警備員不足、公共工事の地域偏在などの複合要因が絡む。詳細は 地域格差の背景 で解説した。


年収を上げる3ルート|資格・役職・独立

収入を改善する方向性は大きく3つに分かれる。それぞれの即効性・難易度・期待効果を比較して、自分の状況に合ったルートを選びたい。

DIAGRAM

警備員の年収を上げる3ルート

現在の年収
ROUTE 1

資格取得ルート

業務検定1級・指導教育責任者で手当・配置優遇

即効性 中

ROUTE 2

役職昇進ルート

隊長・所長・エリアマネージャーで基本給アップ

中長期で高い

ROUTE 3

独立・開業ルート

警備会社設立で経営者収入を狙う(要営業力)

上限なし

アップ後の年収

資格取得ルート

汎用性が高く、現職を続けながら実行できるルート。業務検定(2号なら交通誘導警備業務検定など)の取得から始め、段階的に上位資格・指導教育責任者へ進むのが王道のキャリアパス。試験スケジュール・費用は全国警備業協会や各都道府県警備業協会で確認できる(警備員の資格一覧)。

役職・管理職ルート

現場リーダー・班長・所長・エリアマネージャーへの昇格で、基本給+役職手当が加算される。管理職レベルでは他業種と遜色のない収入水準になるケースがある。昇格には現場実績と、指導教育責任者などの管理系資格が求められることが多い。在職年数と賃金背景 も参考にしたい。

独立・開業ルート

経験と人脈を積んだ後に警備会社を立ち上げる選択肢。発注単価を自分で交渉できる反面、営業・採用・法令対応などの経営負荷が伴う。警備会社の独立開業ガイド で手順・初期投資・リスクを整理している。


まとめ|年収を確認する際に参照すべき一次情報

警備員の年収は「号数・雇用形態・資格・地域・勤務形態」の組み合わせで決まり、公的統計と民間集計値では出所と目的が異なる。実態把握には複数のデータソースを併読するのが確実。

一次情報リンク集

警備ラボの関連レポート

最終更新: 2026年7月。本記事は公的データ(国土交通省・警察庁・厚生労働省)を参照した一般的整理であり、実際の年収・手当は各社の給与規程・地域・本人のキャリアによって決まる。最新の法令・統計は公式情報で必ずご確認ください。