警備業界の東証プライム上場は セコム・ALSOK(綜合警備保障)・CSP(セントラル警備保障)の3社 のみで、業界売上規模では セコム が長年業界1位、CSP が3位の位置づけ です。両社の連結売上規模には約16倍の差がありますが、事業構造・成長領域・資本関係の観点で見ると、それぞれ独自の役割を業界内で担っています。
本記事では、業界1位セコム と 3位CSP に焦点を当て、直近の有価証券報告書・決算短信・警察庁「警備業の概況」の一次情報から、両社の事業構造・売上規模・戦略の違いを中立比較します(2026年7月時点)。ランキング付けや優劣評価は行わず、事実引用と業界視点の整理に徹します。
※ 本記事はセコム・CSPの直近決算短信(2026年3月期・2026年2月期)および公式IR資料に基づきます。売上・契約件数・事業構成は各年度で変動するため、最新数値は各社の公式IRページでご確認ください。本記事は個人向けに契約を勧める目的ではなく、業界視点で1位と3位の位置づけを理解する解説です。
業界1位セコム・3位CSPの位置づけ
警察庁「令和6年における警備業の概況」によれば、日本国内の警備業者は10,811業者、警備業界の売上高は約3兆4,478億円(2024年集計)で推移しています。この中で 東証プライム上場の警備会社は 3社(セコム・ALSOK・CSP)で、上場3社の連結売上を単純合算すると業界全体の売上高の相当部分を占める構造です。
業界5社(セコム・ALSOK・CSP・全日警・東洋テック)の俯瞰は大手警備会社の売上ランキング で整理していますが、本記事では セコム と CSP の2社比較 に絞って深掘りします。ALSOK vs セコム の2位・1位比較はALSOK vs セコム|売上・シェアを上場3社IRで比較 で別途整理しています。
創業と業界における役割
| 項目 | セコム株式会社 | CSP(セントラル警備保障) |
|---|---|---|
| 創業 | 1962年 | 1966年 |
| 証券コード | 9735(東証プライム) | 9740(東証プライム) |
| 主要事業 | 機械警備・常駐警備・医療・保険・海外・防災 | 機械警備・常駐警備・運輸(JR東日本系) |
| 特徴 | 警備業を起点に多角化した企業グループ | JR東日本グループとの資本提携で鉄道関連警備に強み |
| 業界史 | 日本初の警備業者・1966年に日本初の機械警備 | 1966年設立以降JR東日本と長期提携 |
| 地理展開 | 全国+海外 | 首都圏中心 |
セコムは業界のパイオニアとして1962年創業、1966年に日本初のオンライン機械警備「SPアラーム」を開始した企業として業界史に位置付けられます(詳細は警備業の歴史 を参照)。
連結売上高・営業利益の比較(2026年直近決算)
両社とも2026年決算で過去最高を達成しています。
| 業績指標 | セコム(2026年3月期) | CSP(2026年2月期) |
|---|---|---|
| 連結売上高 | 約1兆2,569億円(前期比+4.7%) | 約787億円(前期比+10.3%) |
| 営業利益 | 約1,603億円(+11.1%) | 約45億円(+3.9%) |
| 経常利益 | 約1,822億円(+4.0%) | 約47億円(+3.0%) |
| 親会社株主帰属純利益 | 約1,127億円(+4.2%) | 約25億円(-22.5%) |
| 過去最高更新 | 売上・営業利益・経常利益・純利益すべて過去最高 | 売上は過去最高 |
(出典:セコム 2026年3月期決算短信 セコム IR / CSP 決算短信、2026年4-5月開示)
売上規模では セコムが CSP の約16倍。ただしセコムの連結売上には警備事業以外の事業領域が広く含まれる点に注意が必要です。両社とも直近決算で成長基調を維持している点は共通しています。
事業戦略の違い
セコム:警備を起点に多角化した企業グループ
セコムは警備業を起点に、以下の広範な事業ポートフォリオを組成しています(セコム IR)。
- 警備事業:常駐警備・機械警備・巡回警備(法人・個人)
- セキュリティ関連事業:防犯・防災機器の販売・保守
- メディカルサービス:セコム医療システム等
- 保険事業:セコム損害保険
- 地理空間情報:パスコ(測量・地図)
- 情報通信:セコムトラストシステムズ
- 海外事業:東南アジア・オセアニア等での警備事業
警備業を起点に業界外へ多角化した企業グループ で、業界内での位置づけと業界外での位置づけの両面で評価する必要があります。連結売上約1.2兆円という規模は、警備業単体の事業者としてではなく、多角化コングロマリットとしての規模と理解するのが実態に近いです。
CSP:JR東日本系×首都圏インフラ警備
CSPはJR東日本グループとの資本関係を戦略の軸に、以下の事業構造を持ちます(CSP IR)。
- JR東日本との資本提携:主要株主にJR東日本(持株比率約25%、株探等の公開情報 2025年時点)
- 鉄道関連警備:駅構内・鉄道敷地・関連施設の警備
- 首都圏中心の事業展開:関東圏を主戦場とする地理的集中
- 機械警備:法人向け中心に首都圏で契約件数を積み上げ
- オフィスビル警備・商業施設警備:JR東日本グループ関連施設との連携
規模ではセコムに大きく及ばないものの、JR東日本という国内最大級の鉄道インフラ企業との資本関係 により、鉄道・都市インフラという明確なドメインで独自の存在感を発揮しています。
資本関係の違い
セコム:独立系の巨大企業グループ
セコムは特定の親会社を持たない独立系グループで、東証プライム上場の巨大企業として自己完結型のグループ経営を行っています。セコムトラストシステムズ・セコム医療システム・パスコ・セコム損害保険等、多数の子会社・関連会社を持つコングロマリット構造で、業界のリーダー企業として業界の方向性を形作る立場にあります(警備業の資本関係マップ)。
CSP:JR東日本との長期資本提携
CSPは1966年の創業以降、JR東日本(旧国鉄→JR東日本)と長期的な資本提携関係を築いてきました。株探等の公開情報によれば、JR東日本が筆頭株主として持株比率約25%を占めるとされ、事業面でも駅構内警備・鉄道敷地内警備でJR東日本グループとの深い連携があります。
この資本関係は、業界内で 「事業会社グループのインフラ系列に位置する警備会社」 の代表例として言及されます。個別の株主構成・持株比率の最新値は必ずCSPの有価証券報告書・株主構成の公表資料で確認してください。
業界の業務区分(1〜4号)カバレッジの違い
警備業法第2条第1項が定める業務区分(1号〜4号警備の違い)でのカバレッジ比較:
| 業務区分 | セコム | CSP |
|---|---|---|
| 1号業務(施設警備・機械警備) | ◎ 全国+海外 | ○ 首都圏中心 |
| 2号業務(交通誘導・雑踏警備) | ○ | ○ 限定的 |
| 3号業務(貴重品運搬警備) | ◎ 業界屈指の実績 | △ 限定的 |
| 4号業務(身辺警護) | ○ | △ |
セコムは1〜4号すべてを高水準でカバー+海外事業も持つ最大規模のプレイヤー、CSPは1号(施設警備・機械警備)を中心に事業を組成しています。機械警備の業界史をリードしてきたのはセコム(1966年 日本初のオンライン機械警備)で、CSPを含む他社は各社の強みで機械警備事業を成長させてきた歴史があります。
発注者視点:どちらを選ぶか
セコムを選ぶ場合
- 全国拠点・海外拠点をカバーする発注:多国籍展開の企業
- 警備+医療+保険+情報通信の複合発注:グループ内の連携メリット
- 業界最大手の実績・ブランド重視:業界1位の連結売上規模を評価する場合
- 業界パイオニアの機械警備実績:日本初のオンライン機械警備を持つ企業を選ぶ場合
CSPを選ぶ場合
- 首都圏中心の警備発注:関東圏に事業拠点が集中する企業
- 鉄道関連施設の警備:駅・鉄道敷地・関連施設の警備需要
- JR東日本グループとの連携がメリットになる発注:JR東日本関連の商業施設・オフィスビル等
発注者向けの選び方の総論は警備会社の選び方 を参照してください。
警備員視点:キャリアパスの違い
セコムでのキャリア
- 業界最大手ブランドでの経験:業界1位企業での実務経験
- 業務区分の幅広い経験:1〜4号すべてで実務経験を積める
- 多角事業への横展開:警備以外の医療・保険・情報通信への異動機会
- 海外勤務の可能性:海外拠点への配属機会
CSPでのキャリア
- 首都圏中心の勤務:関東圏に勤務地が集中
- 鉄道関連警備の専門キャリア:駅構内・鉄道敷地の警備実務
- JR東日本グループとの接点:JR東日本の関連プロジェクトに関与する機会
両社とも東証プライム上場企業として教育体制・等級制度・資格取得支援が整備されており、給与水準も大手としてのレンジに収まります。個別の平均年間給与は各社の有価証券報告書で確認できます。
業界における位置づけの総合まとめ
| 観点 | セコム | CSP |
|---|---|---|
| 連結売上高 | 業界1位・約1兆2,569億円 | 業界3位・約787億円 |
| 事業モデル | 多角化コングロマリット | 特化型(1号中心・JR系) |
| 資本関係 | 独立系巨大企業グループ | JR東日本と資本提携 |
| 地理展開 | 全国+海外 | 首都圏中心 |
| 業界史 | 日本初の警備業者・機械警備パイオニア | JR東日本との長期提携 |
| 業界内での役割 | 業界最大手・リーダー | 独自ドメインの専門プレイヤー |
規模差は約16倍ですが、セコムの連結売上には警備業以外の事業が広く含まれるため、警備事業単体の比較では規模差は縮小する可能性があります。両社の位置づけの違いは 「多角化コングロマリットの規模(セコム)vs 特定ドメインの深さ(CSP)」 という対比で業界内で理解されます。
編集部の見立て
警備業界の上場3社を業界視点で見ると、セコム が業界最大手のリーダー企業、ALSOK が2位の総合プレイヤー、CSP が独自ドメインを持つ専門プレイヤー という役割分担が長年続いています。セコムとCSPの売上規模差は約16倍と非常に大きいものの、CSPは JR東日本という国内最大級の鉄道インフラ企業との資本関係 により、業界内でセコム・ALSOKとは異なる次元の存在感を保っています。
セコムは業界のパイオニアとしての歴史(1962年創業・1966年日本初のオンライン機械警備)と、警備業を起点に多角化した企業グループとしての事業幅の広さで、業界のリーダー企業の位置を確固たるものにしています。CSPは規模では対抗できないものの、鉄道・都市インフラという明確なドメインで独自の役割を担い、上場3社の一角としての存在感を発揮しています。
警備ラボとしては、業界の意思決定インフラとして、上場3社の直近IRデータを継続的に整理し、事業戦略の変化を業界視点で発信していきます。個別事業者の詳細は、必ず各社の公式IR資料を一次情報として確認してください。
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