警察庁が毎年公表する「令和6年における警備業の概況」は、日本の警備業界に関する 最も権威ある公的統計 です。警備員数・業者数・年齢構成・業務区分別内訳・機械警備の推移など、業界の実態を把握するための一次データが体系的に整理されています。
本記事では、警備業界のB2Bデータメディアである KEIBI-Lab が、令和6年版の主要10指標を 業界視点の見立て付き で読み解きます。原典PDFは警察庁「警備業」ページ からダウンロードできます(2026年7月時点)。
1. 概況PDFの位置づけと構造
「警備業の概況」とは
- 発行元:警察庁生活安全局
- 公表頻度:毎年1回(前年実態のまとめ)
- 調査対象:都道府県公安委員会の認定を受けた警備業者
- 調査方式:認定業者を通じた悉皆調査(に近い)
- 公開形式:PDFで無料公開
業界内で 最も信頼性の高い一次データ として、業界団体・研究者・投資家・行政関係者・警備会社経営者が広く参照する定型資料です。
PDF構成の基本(令和6年版)
主要な章立ては以下の通りです(実際の目次は原典PDFで確認してください)。
- 警備業者数の推移
- 警備員数の推移・年齢構成
- 業務区分別の警備員数
- 機械警備業務対象施設数
- 検定合格者数
- 都道府県別データ
2. 令和6年版の10指標|業界構造を映すデータ
警備ラボが業界分析で最も参照する10指標を、令和6年版の実数値ベースで整理します。
指標①:警備員総数
- 約56万人(前年比 +0.1%)
- 業界の “人的規模” を示す基幹指標
- 「-0.1%横ばい」の背景は業界内で議論の対象
指標②:警備業者数
- 約1.08万社(+6.9%増)
- 業者数は右肩上がりだが、警備員数は横ばい
- 1社あたり警備員数は 58.2人 → 54.4人へ減少
- 詳細は業者vs警備員クロス分析で整理
指標③:60歳以上比率
- 47.0%
- 業界の高齢化を最も端的に示す数字
- 詳細は警備員47.0%が60歳以上
指標④:70歳以上比率
- 20.9%
- 5人に1人が70代以降で就業
- 業界の高齢化の “更に深い層” を示す
指標⑤:40歳未満比率
- 19.4%
- 若年層の入職不足を示す指標
- 「新規入職 × 高齢者継続就業」の構造
指標⑥:業務区分別警備員数
- 1号業務(施設)が業界内で最多
- 2号業務(交通誘導/雑踏)が続く
- 3号・4号は少数派
- 詳細は業務区分別の構成費
指標⑦:機械警備対象施設数
- 約342万カ所(+7.8%増)
- 5年で約24.7万施設増加
- 業界内で最も成長する領域
- 詳細は機械警備の市場構造
指標⑧:勤続1年未満比率
- 17.6%
- 業界の離職構造を示す指標
- 高齢化と勤続短さの併存
指標⑨:警備員検定合格者数
- 業務区分別・級別で公表
- 業界の資格保有動向
- 詳細は検定合格者数の経年推移
指標⑩:都道府県別データ
- 警備員数・業者数の47都道府県分布
- 地域別の需給ギャップを示す
- 労務単価の地域差と併せて分析
3. 業界データメディアとしての読み解き
「業者+6.9% × 警備員-0.1%」が示す業界再編
新規参入は続いているが、既存の警備員は増えていない。この構造は、業界内で 1社あたりの警備員数が縮小し続けている ことを意味します。中小零細事業者の淘汰と、業界再編の同時進行が進んでいる兆候として、業界内で議論される論点です(倒産増加分析)。
「高齢化47.0% × 40歳未満19.4%」の非対称
業界の中位層(40〜60歳)が薄く、高齢者と若年層の非対称な構造。労務単価の連続上昇(8年+38.2%)が続く中でも、若年層の入職を大きく増やせていない構造課題は継続しています。
「機械警備+7.8% × 警備員-0.1%」の乖離
人手ベースの警備が横ばいの中、機械警備だけが拡大している。これは 業界のDX投資が加速している 兆候として、KEIBI-Lab のAI実装マップ(AI実装企業マップ)・技術革新とR&D でも整理しています。
4. PDFの入手方法と経年比較
最新版の入手
公式:警察庁「警備業」ページ → 「令和6年における警備業の概況」項目からPDFダウンロード(無料)
経年比較のポイント
- 令和6年版(2024年実態)は 2025年公表
- 過去年度分(令和5年・令和4年 等)も同ページで公開
- 経年比較には 同じ集計基準の年度 を選ぶ(集計方法の改定があった年は要確認)
更新スケジュール
- 例年 中〜下期 に前年実態版が公表
- 毎年更新される “業界の定型資料” として業界内で参照される
5. 「警備業の概況」を活用する 3つの業界ユースケース
ユースケース①:業界研究・投資判断
上場3社(セコム・ALSOK・CSP)の連結売上と、警察庁の業界売上(約3兆円規模)を突き合わせることで、シェア推定の “分母” が把握できます。詳細はALSOK vs セコム|上場3社IR比較 で整理しています。
ユースケース②:警備会社の経営判断
自社の警備員数・業務区分構成・地域分布を業界平均と比較することで、業界内のポジショニング が可視化できます。特に業者数増加・警備員数横ばいの構造下では、経営判断の重要な参照データです。
ユースケース③:業界メディア・ジャーナリズム
業界の統計を “個人の感覚論” ではなく “公的統計の一次データ” で語れる。KEIBI-Lab が業界データメディアを名乗る根拠も、この概況PDFを含む一次データへの継続参照にあります。
6. 編集部の見立て|10指標が示す業界の中長期論点
「令和6年における警備業の概況」を継続的に読むと、業界の 3つの中長期論点 が浮かび上がる。①人手ベース警備は成長限界、②機械警備・DX投資が業界の実質的な成長エンジン、③業者数増と警備員数横ばいのギャップは業界再編の予兆。この構造下では、大手・中堅への集約と、業種別専門性の細分化が同時に進行する可能性が高い。
主要な論点
- 人手不足の構造化:高齢化47.0% × 若年層入職不足の非対称
- 業界再編の予兆:業者+6.9% × 警備員-0.1%の乖離
- DX投資の加速:機械警備+7.8%が業界成長を牽引
- 地域格差の継続:47都道府県別の需給ギャップ
- 業種別専門性の分化:業種別の実務が個別体系化
7. 出典・参考データ
- 警察庁「警備業」ページ: https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/keibigyou/index.html
- 警備業法(e-Gov 法令検索): https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=347AC0000000117
- 全国警備業協会: https://www.ajssa.or.jp/
8. 警備ラボの関連レポート
- 警備員47.0%が60歳以上の10指標 — 概況の高齢化指標を掘り下げ
- 警備業界の人手不足の正体 — 業者vs警備員クロス分析
- 業者vs警備員クロス分析 — 業界再編の予兆
- 業務区分別の構成費比較 — 業界の業務区分内訳
- 機械警備の市場構造 — 機械警備の成長
- 検定合格者数の経年推移 — 資格保有動向
- 警備業の倒産が過去最多 — 業界再編の兆候
- 警備業界 全体マップ 2026 — 業界構造
編集部の見立て:警察庁「令和6年における警備業の概況」PDFは、業界の一次データとして最も権威ある資料です。警備ラボは、この概況の10指標を継続的に参照しつつ、上場企業のIR資料・国交省労務単価・厚労省統計と併せて業界構造を分析しています。単一のデータソースに依存せず、複数の一次情報を突き合わせることで、業界の実態をより正確に読み解けるのが本記事群の設計思想です。個別数値の詳細は必ず原典PDFで最新値をご確認ください。