警備業の倒産件数が、2025年上半期に 16件で過去最多ペース を記録したと帝国データバンク(TDB)の調査で報じられました。前年同期(8件)の 倍増 で、年間ベースでは上半期時点で前年(15件)を超過しています。本記事は、TDB調査と警察庁データを組み合わせ、警備業の倒産増加の構造要因を中立メディアの立場で整理しました(2026年6月時点)。
※ 本記事は2025年8月4日報道のTDB調査(出典:オフィスのミカタ)と、警察庁「令和6年における警備業の概況」の公開データを組み合わせた編集部の独自分析です。最新の倒産件数・業界統計は各機関の公式情報でご確認ください。
TDB調査|2025年上半期の倒産16件の事実関係
帝国データバンク(TDB)の調査として報じられた事実関係を整理します。
件数・前年比
- 2025年上半期(1〜6月)倒産件数:16件
- 前年同期(2024年1〜6月):8件
- 前年比:倍増(+8件)
- 過去最多ペース:上半期として過去最多を更新中
- 年間との比較:前年(2024年)の年間倒産件数15件を、上半期時点で既に超過
倒産要因(公表ベース)
倒産16件のうち、少なくとも 5件が「人手不足」を要因 としていると報じられています。また、業界全体では 企業の約9割が正社員・非正社員双方で人手不足を感じている と整理されています。
給与水準のギャップ
警備員の 現金給与額26万8,300円 が、全国平均33万400円 を大きく下回るデータも同調査で報じられました。労務単価は8年で+38.2%上昇しているにもかかわらず(労務単価データ)、業界の実給与水準は他業種比で依然として低位にあります。
倒産増加の3つの構造要因|中立メディアの分析
警備業の倒産増加は、3つの構造要因のクロスとして整理できます(編集部の見立て)。
要因1:構造的な人手不足
警察庁データでは、警備員総数は+0.1%でほぼ横ばい、警備業者は+6.8%増加(業者vs警備員クロス分析)。1社あたりの警備員数は58.1人→54.4人へ減少 という構造で、業者あたりの人員確保が継続的に困難になっています。
業界全体の高齢化(60歳以上46.9%)と、若年層の入職不足が併存する構造下で、人手不足は構造的に解消困難な課題として継続しています。
要因2:低単価受注 × 賃金高騰の挟み撃ち
労務単価が8年で+38.2%上昇している一方、低単価受注で利益確保が困難な小規模事業者 は賃金高騰に対応できず、事業継続を断念するケースが増えていると指摘されています。
労務単価の上昇は警備会社にとって 収入側のプラス であると同時に、支出側(人件費)のマイナス にもなる二面性を持ちます。価格交渉力の弱い小規模事業者ほど、上昇分を取引先に転嫁できず、利益率の悪化を経営努力で吸収する構造に追い込まれます。
要因3:業界の零細化と価格交渉力
警察庁データでは、業者の 84.5%が1営業所、37.5%が9人以下 という小規模事業者中心の業界構造があります(業者vs警備員クロス分析)。価格交渉力が限定的な零細業者 が、市況の急変動に対応できずに淘汰される構造が、倒産件数の増加に直結しています。
業者数増加と倒産増加の矛盾|業界再編の兆候
警察庁データの業者数+6.8%増加と、TDB調査の倒産16件・過去最多ペースは、一見すると矛盾するデータです。
「新規参入×既存淘汰」の同時進行
編集部としての見立ては、新規参入は続くが既存の零細業者が淘汰される という構造的な業界再編の兆候として整理しています。
- 新規参入:警備業の参入障壁は比較的低く、業務区分認定取得で参入可能
- 既存淘汰:人手不足・低単価・賃金高騰に耐えられない零細業者が事業継続を断念
業者数は 「純増の数字」 であり、参入と淘汰の差分です。淘汰が増えても参入がそれを上回れば業者数は増え続けます。一方、業界全体の 質的な再編 は確実に進行している構造です。
業界再編の方向性
業界再編の方向性は、警備業界M&A・業界再編の最前線 で別途整理しています。本記事のデータは、その文脈での 「再編圧力の定量化」 として位置づけられます。
中堅・大手の経営戦略への影響
倒産増加は、中堅・大手警備会社の経営戦略にも影響を及ぼします。
大手3社(ALSOK・セコム・CSP)への波及
業界の零細化が進む構造下で、大手3社の市場シェアは構造的に拡大 する方向に動くと見られます。事業承継・M&Aの受け皿としての役割が拡大する可能性があります。
中堅警備会社の選択肢
中堅警備会社は、業界再編の中で複数の戦略オプションを持ちます。
- 地域内のシェア拡大(淘汰された業者の取引先吸収)
- 大手への売却・統合
- 機械警備・AI実装による差別化(機械警備市場+7.8%成長・AI実装企業マップ)
- 業務区分の特化(4号・3号など希少業務への集中)
DX・AIへの投資加速
人手不足・倒産増加の構造下で、DX・AI投資による省人化 が業界の中長期戦略として加速する見通しです。警備管制SaaS市場の拡大は、その文脈での主要トレンドの一つです。
警備員・現役従事者への影響
倒産増加は、警備員・現役従事者にとっても複数の影響を及ぼします。
雇用の流動化
零細業者の倒産は、警備員の 雇用流動化 を意味します。一方、業界全体の人手不足構造下で、転職先の確保は比較的容易な構造です。詳細は警備員の求人サイト・転職サイト6社比較 を参照してください。
処遇改善への期待
業界全体の単価環境改善(労務単価8年で+38.2%)と人手不足の構造下で、現役警備員の処遇改善は中長期的に進む方向 と見られます。給与水準の他業種比較は前述の通り課題ですが、業界の構造的圧力で改善トレンドは続くと整理できます。
異業種転職の選択肢
警備員の経験を活かした異業種転職も現実的な選択肢です。詳細は警備員→異業種転職7パス・異業種転職エージェント比較7選 で整理しています。
中長期の業界構造予想|中立メディアの見立て
警備業の倒産増加は、業界の中長期的な構造変化の 一里塚 として位置づけられます。
短期(〜2027年)
- 小規模事業者の倒産・廃業の継続
- 大手・中堅への取引先集約
- DX・AI投資の本格化
中期(2027〜2030年)
- 業界の集約化が一段と進行
- 機械警備・AI実装の標準化
- 業務区分別の特化型業者の生き残り
長期(2030年〜)
- 業界構造の質的変化(大手集約 + 専門特化型の二極化)
- 海外人材活用の制度設計(特定技能対象分野化議論の動向次第)
- 業界全体の処遇水準の他業種並みへの収斂
詳細な政策動向は警備業の特定技能対象分野化議論、業界比較は建設・介護・警備の外国人受入比較 で別途整理しています。
まとめ|倒産過去最多ペースが示す業界の転換点
警備業の2025年上半期倒産16件・過去最多ペースは、業界の構造的な転換点 を示すデータです。「人手不足×低単価×零細化」の3要因クロスが、業界の質的な再編を加速させています。
中立メディアの立場として、本記事のデータは 「警備業界の現在地」を示す重要なシグナル として整理しました。業界の経営者・投資家・記者・現役従事者にとって、中長期の戦略判断のベースとなるデータです。
業界の構造データは業者vs警備員クロス分析・人手不足の正体・警備員46.9%が60歳以上、業界再編の方向性は業界M&A・再編の最前線、DX・AIの動向はAI実装企業マップ であわせて整理しています。
出典:TDB調査報道(オフィスのミカタ 2025年8月4日)、警察庁警備業の状況、国土交通省公共工事設計労務単価、帝国データバンク、東京商工リサーチ。