「警備員は長く続けられる仕事なのか?」――この問いに、感覚論ではなく 公的データ で答えるための解説記事です。

警察庁「令和6年における警備業の概況」(2024年末時点)の在職年数分布によれば、警備員の在職年数は 1年未満17.6% / 1〜3年未満20.8% / 3〜10年未満32.0% / 10年以上29.6% という分布です(出典:警察庁 警備業の状況)。本記事はこの構造を読み解き、業界全体の働き方の傾向と、現役・志望者のキャリア戦略を整理します(2026年6月時点)。

※ 本記事は警察庁が公表する全国計の数値に基づく一般的整理です。地域・会社・業務区分によって在職年数の分布は大きく異なります。個別の判断は所属会社または応募先の状況を必ず確認してください。

警備員の在職年数分布グラフ|1年未満17.6% 3年未満38.4% 10年以上29.6%(警察庁データ)

警備員の在職年数分布(早期離職と長期定着)(出典:警察庁・国土交通省/編集部整理)

このガイドが想定する読者

本記事は、次のような読者を想定しています。

  • これから警備員を目指す方:定着率・離職構造を事前に知っておきたい
  • 現役警備員:自分の在職年数が業界全体のどの位置にあるか把握したい
  • 転職を考える警備員:長期キャリア設計の判断材料が欲しい
  • 警備会社の人事担当:定着率向上策の検討材料が欲しい

警備員の仕事内容の全体像は警備員の仕事内容ガイド、未経験からの入職は未経験から始める警備員ガイドで別途整理しています。本記事は 在職年数データから読む業界の働き方 に焦点を絞ります。

このデータの読み方|先に押さえる前提

警察庁「警備業の概況」とは

警察庁生活安全局が 毎年公表 する、警備業法に基づく警備業の全国統計です。本記事で扱う数値はすべて 令和6年版(2024年末時点) の実値です。

在職年数の集計区分

警察庁は警備員の在職年数を以下の4区分で集計しています。

区分人数割合
1年未満103,50717.6%
1〜3年未満122,24320.8%
3〜10年未満187,90732.0%
10年以上174,19129.6%
合計587,848100.0%

「在職年数」と「経験年数」の違い

ここで重要な前提として、 在職年数 = 現在勤めている警備会社での勤続年数 であり、業界全体での経験年数とは異なる 点に留意してください。

たとえば「A社で2年 + B社で8年」のキャリアの警備員は、警察庁集計上は「1〜3年未満」または「3〜10年未満」のいずれかに分類されます(直近の所属会社での勤続のみ)。業界経験10年でも、転職直後ならカテゴリ上は「1年未満」になる可能性があります。

指標①:1年未満が17.6%という事実

警備員の 約6人に1人が在職1年未満。この層は次のいずれかに分類できます。

  1. 新規入職者:業界未経験で警備員になったばかりの層
  2. 転職入職者:別の警備会社から移ってきた層
  3. アルバイト・短期雇用者:継続意思の薄い層

警察庁データは離職率の直接指標ではないものの、 入職・離職の活発な業界 であることはこの数字から読み取れます。

指標②:1〜3年未満が20.8%

1〜3年未満の在職層が 20.8%(122,243人) いる構造は、業界として 継続意思のある層が一定数存在 することを示しています。1年未満から1〜3年未満に「定着」してきた層と、転職で移って来てまだ間もない層が含まれます。

指標③:3年未満の合計が38.4%

1年未満17.6% + 1〜3年未満20.8% = 38.4%。警備員の 約4割が在職3年未満 という構造です。

これは「警備業界における3年の壁」を示唆します。一般論として、最初の3年を乗り越えるかどうかが定着の節目 になりやすい構造です。続けられるかの自己判断には警備員はきつい?が参考になります。

指標④:3〜10年未満が32.0%

中堅層となる3〜10年未満は 187,907人(32.0%) で、4区分の中で最大シェア。業界の中核となる中堅警備員層 がここに集中しています。

この層は資格取得・現場リーダー・指導教育責任者ルートへのステップを進む時期と重なります。資格取得の経済価値はA vs B賃金差から見る警備員資格の経済価値、合格者数データは警備員検定合格者数の経年推移で整理しています。

指標⑤:10年以上が29.6%

警備員の 約3人に1人が在職10年以上。これは業界の長期定着層の厚みを示します。

在職区分累計シェア
3年以上61.6%
10年以上29.6%

長期定着層が3割存在する構造は、警備業が長期的に働ける職業として一定の安定性を持つ ことの裏付けです。一方で、年齢構成と組み合わせて読むと、長期定着層の中には 70歳以上の継続勤務者 も含まれていると推察されます。年齢構成の詳細は警備員46.9%が60歳以上で整理しています。

「短期離職」と「長期定着」の二極化構造

データを再構成すると、警備業界の在職年数は以下のような 二極化構造 にあると整理できます。

短期離脱ゾーン(3年未満:38.4%)

  • 1年未満:17.6%
  • 1〜3年未満:20.8%
  • 計:38.4%

長期定着ゾーン(3年以上:61.6%)

  • 3〜10年未満:32.0%
  • 10年以上:29.6%
  • 計:61.6%

この 「3年を境にした二極化」 が、警備業界の働き方の最大の特徴です。3年を乗り越えた層は長期定着しやすく、3年以内に離脱する層は別業界・別職種へ移っていく構造が示唆されます。

短期離脱の背景にある構造的要因

警察庁データには離職理由までは含まれませんが、一般論として以下の要因が挙げられます。

要因①:体力的負荷との不適合

  • 屋外勤務(交通誘導):天候・気温の影響
  • 長時間立哨:施設警備の常駐勤務
  • 夜勤:生活リズムの調整負荷

季節装備・身体負荷の対策は空調服着圧ソックス防寒手袋安全靴などの実用記事で整理しています。

要因②:給与条件のミスマッチ

  • 入職前のイメージと実際の手取りの差
  • 資格手当・夜勤手当の有無
  • 公的単価と社内給与の連動メカニズム

賃金構造の理解は警備員の年収完全ガイド、賃金トレンドは警備員の賃金トレンドで整理しています。

要因③:職場環境との適合

  • 教育研修の体制
  • 配属業務との適性
  • 人間関係・組織文化

事前に確認すべき注意点は警備員になってはいけない人の特徴を参照してください。

長期定着層の特徴

警察庁データから「10年以上」の長期定着層29.6%の構造的特徴を整理します。

特徴①:高齢層と重なる可能性

70歳以上の警備員が20.9%いる構造を踏まえると、長期定着層の一部は高齢層と重なっている と推察されます。再雇用後に同社で継続勤務するパターンも含まれていると考えられます。

特徴②:資格保有による定着強化

警備員検定2級・1級・指導教育責任者などの資格保有者は、 会社内での評価と配属の幅 が広がり、結果として定着しやすい傾向があります。資格戦略は警備員の資格ガイドで整理しています。

特徴③:管理職・指導者ポジションへの到達

長期定着層には 隊長・主任・指導教育責任者 などのポジションに就いた警備員が含まれます。階級・昇進体系は警備員の階級と昇進ルートで整理しています。

現役・志望者のためのキャリア戦略

戦略①:「最初の3年」を意識して計画する

データが示すように、3年が定着の節目です。最初の3年で何を達成するか を具体的に決めると、短期離脱のリスクが下がります。

おすすめのマイルストーン:

  • 1年目:基本業務の習熟、新任研修の振り返り
  • 2年目:警備員検定2級の取得(資格ガイド
  • 3年目:現場リーダー候補としての評価、転職の検討材料も整理

戦略②:自分の適性と業務区分の適合を確認する

業務区分(1号施設・2号交通誘導・2号雑踏・3号貴重品・4号身辺)で、 体力負荷・勤務時間帯・人とのやり取り が大きく異なります。早期に自分に合う業務区分を見極めることが定着の鍵です。

戦略③:会社選びを「労働条件」の視点で見直す

定着の前提となる労働条件は、会社によって大きく異なります。 資格手当・夜勤手当・教育体制・昇給制度 などを比較して、長期で働ける会社を選ぶことが重要です。

戦略④:転職も「長期キャリア」の選択肢に入れる

警察庁データは「直近の所属会社での勤続」を集計しているため、 業界内転職は1年未満カテゴリにカウントされる 構造です。1〜2社目を経験して自分に合う環境に落ち着くというキャリアパスも、業界内で広く存在します。

警備会社人事担当のための示唆

示唆①:定着投資のターゲット層

データから、定着投資のターゲットは以下の3層になります。

  1. 入職1年以内の新人層(17.6%):教育体制と早期フォローアップ
  2. 1〜3年の中堅前期層(20.8%):資格取得支援とキャリア面談
  3. 3年以上の中堅・ベテラン層(61.6%):昇進ルート明示と評価制度の整備

示唆②:装備・健康投資は定着投資

体力負荷を下げる装備(空調服・着圧ソックス・反射ベスト・安全靴・防寒装備)への投資は、 直接の作業効率向上に加えて、長期定着への寄与 という側面があります。装備全体は警備員の用品まとめで整理しています。

示唆③:採用と定着の二軸経営

業界全体で年齢構成が高齢化・1社あたり警備員数が縮小する構造の中、 若年層の採用と既存層の定着 を二軸で進めることが経営の前提になります。

このデータの限界と注意点

本記事で扱った数値は、警察庁が公表する 全国計の在職年数分布 に基づくものです。以下の点に留意してください。

  • 離職率の直接指標ではない:在職年数分布から離職率を逆算するには、新規入職者数・退職者数の年次データが別途必要
  • 「在職年数」は直近の所属会社での勤続年数:業界全体の経験年数とは異なる
  • 業務区分別の在職年数は未公表:1号・2号・3号・4号それぞれの定着率までは見えない
  • 会社規模別の在職年数は未公表:大規模会社と小規模会社で構成が異なる可能性

データの一次情報・出典は/data/keibi-gyoukai/の各項目に明記しています。

まとめ|定着の鍵は「最初の3年」

  1. 在職年数は3年を境に二極化:3年未満38.4% / 3年以上61.6%
  2. 10年以上の長期定着層も29.6%存在:警備業は長期で働ける選択肢
  3. 最初の3年の戦略 × 会社選び × 業務適合 が定着の3つの鍵

次のステップ:

警察庁の公的データは無料で誰でも確認できる業界共通指標です。長期キャリアの物差しとして活用してください(2026年6月時点)。