「警備員の給料は上がっているの?」――この問いに、感覚論ではなく 公的データ で答えるための解説記事です。

国土交通省「公共工事設計労務単価」の警備区分(交通誘導A)は、2019年から2026年までの8年間で全国平均が +38.2%(年平均+4.7%) と一貫して上昇しています(出典:国土交通省 公共工事設計労務単価)。

本記事では、現役の警備員・これから業界を目指す方の視点から、この単価上昇が自分の手取り賃金にどう関係するか を整理します。労務単価インデックスの全データは/data/roumu-tanka/ に集約しており、本文中でも繰り返し参照します(2026年6月時点)。

※ 本記事は公的単価データに基づく業界水準の解説です。個別の賃金は所属する警備会社の給与規程・契約条件で決まるため、自分の給料の根拠はかならず会社の就業規則と給与明細で確認してください。

警備員賃金トレンドグラフ|労務単価8年推移・全国平均+38.2%(国土交通省データ)

警備員賃金(労務単価)の8年トレンド(出典:警察庁・国土交通省/編集部整理)

このデータの読み方|まず前提を押さえる

公共工事設計労務単価とは

国土交通省が 毎年3月に改定 して公表する、公共工事の積算に使う賃金基準値です。警備員は「交通誘導A」(資格者または同等の経験者)と「交通誘導B」(A以外)の2区分で公表されます。8時間あたりの 賃金(円) で示されます。

「単価」と「自分の手取り」の関係

ここが多くの警備員が誤解する部分です。

  • 公的単価 = 公共工事の積算で使う 賃金基準値
  • 自分の手取り = 所属会社の 給与規程に基づく賃金

公的単価が上がっても、手取りに連動するとは限りません。一方で、長期的には業界の賃金相場を引き上げる方向に作用する ため、自分の賃金水準を業界平均と比較する 客観指標 として有用です。

具体的な賃金構造の分解は警備員の年収完全ガイドで整理しています。

全国平均8年間の推移|まず数字で確認

交通誘導A 全国平均(円/8時間)

単価前年比
201913,682+6.8%
202014,053+2.4%
202114,364+2.1%
202214,873+3.7%
202315,967+7.1%
202416,961+6.4%
202517,931+5.7%
202618,911+5.8%

8年連続でプラス成長。+5,229円(+38.2%)、年平均+4.7%です。

同じ期間の他業種比較の感覚

警察庁・厚労省の統計を見ると、警備員のこの +38.2%という8年伸び率 は、サービス業の他職種平均と比べても明らかに高い水準です(出典:厚生労働省 賃金構造基本統計調査)。

コロナ禍でも止まらなかった

特筆すべきは、コロナ禍の2020〜2021年でも上昇が止まらなかった点です。これは警備業務が 景気循環の影響を相対的に受けにくい ことの裏付けでもあります。

都道府県別マップ|2025年 交通誘導A 実値

公的単価は 都道府県別 にも公表されています。2025年の交通誘導A実値(円/8時間)を、伸び率順に主要県を整理しました。

2025年単価2018→2025伸び率
岐阜県19,600+48.5%
愛知県20,900+48.2%
静岡県20,200+47.4%
沖縄県15,300+44.3%
東京都20,200+42.3%
大阪府17,400+42.6%
神奈川県19,900+41.1%
千葉県19,300+40.9%
福岡県16,600+38.3%
北海道17,500+37.8%
宮城県18,700+34.5%

このデータから読み取れる3つのこと

  1. 中部圏の伸び率が高い:岐阜・愛知・静岡が全国トップクラスの上昇率
  2. 東名阪・中部で2万円台到達:東京・神奈川・愛知・静岡が2万円超え
  3. 地域差は依然大きい:最高(愛知 20,900円)と最低水準(沖縄 15,300円)で +36.6%の差

県を変えれば給料は変わるのか

公的単価ベースで見れば地域差は明確にありますが、注意点として 生活コスト・物価・住宅費 も地域で大きく異なります。単に「単価が高い県」を選ぶのではなく、実質可処分所得 で考える視点が必要です。

地方移住・転職の選択肢は警備員のキャリアチェンジガイド転職ガイドで整理しています。

単価が上がっても手取りが上がらない3つの理由

理由①:会社の給与体系が連動していない

中小警備会社の一部では、公的単価と社内給与の 連動メカニズムが明文化されていない ケースがあります。この場合、単価上昇分は会社の利益または運転資金に吸収され、賃金には反映されにくくなります。

確認すべきポイント:

  • 自社の就業規則に 昇給根拠 はどう書かれているか
  • 最低賃金改定時に 自動昇給 の仕組みがあるか
  • 資格手当・夜勤手当・職務手当の 金額改定タイミング

理由②:公共案件比率が低い会社にいる

公的単価が直接効くのは 公共工事案件 です。民間案件中心の会社の場合、単価改定が遅れる、または値上げ転嫁が難航するケースがあり、結果として賃金昇給が遅れます。

確認すべきポイント:

  • 自社の 公共/民間比率
  • 公共案件への配置機会

理由③:交通誘導A資格を持っていない

公的単価は A(資格者)とB(無資格)で約13%の差 があります(2026年:A 18,911円 vs B 16,749円)。資格の有無が単価の差 として明確に効いてきます。

検定・資格取得の具体的な道筋は警備員の資格ガイド交通誘導警備業務2級施設警備業務2級で整理しています。

単価上昇を自分の収入に反映させる3つのルート

ルート①:交通誘導検定2級・1級の取得

公的単価AとBの差(2026年で2,162円/日 = 月22日勤務で約4.7万円)は、資格保有による会社の請求単価の差 であり、給与体系がしっかりした会社なら 資格手当として一定額が反映 されます。

具体的な取得手順は警備員の資格ガイド、業務別の試験対策は交通誘導警備業務2級ガイド施設警備業務2級ガイドを参照してください。

ルート②:単価水準の高い会社・地域への転職

同じ警備員でも、所属会社・配属地域で収入水準が変わります。

  • 大手・公共比率の高い会社:公的単価改定が反映されやすい
  • 2万円圏の地域(東京・神奈川・愛知・静岡など):単価ベースが高い
  • 資格手当・昇給制度が明文化された会社:長期で見て賃金が上がりやすい

転職ルートの実務は警備員の転職ガイド、求人サイトの選び方は警備員の求人サイト6社比較で整理しています。

ルート③:高収入領域(4号・大手1号・指導教育責任者)を狙う

警備員の中でも、身辺警護(4号)・大手の1号警備正社員・指導教育責任者 は単価上昇の影響を超えて高収入が狙える領域です。

詳しくは警備員で高収入を狙う方法身辺警護(4号警備)の仕事内容に整理しています。

単価データは「会社選び」の客観指標になる

求人票で確認すべき3項目

求人票を見るときに、公的単価データを 自分の物差し として使うと、会社の賃金水準が業界平均に対してどの位置にあるかを判断できます。

  • 日給/時給の水準:所在地の公的単価Aと比較して何%か
  • 資格手当の金額:A・B区分の差(約13%)が反映されているか
  • 昇給制度:年次昇給/最低賃金連動/公的単価連動の有無

「最低賃金ギリギリ」の会社は要注意

公的単価が伸びているのに、最低賃金スレスレでしか払わない会社は、経営判断として上昇分を従業員に還元していない か、経営余力がない 可能性があります。長期キャリアを考える場合、ホワイト警備会社 の見分け方は警備会社のホワイト企業ランキングも参考になります。

このデータの限界と注意点

本記事で扱った数値は 公共工事設計労務単価 に基づくものであり、すべての警備員の実勢手取り賃金を表すものではありません。

  • 公的単価は積算基準であり、個人の賃金そのものではない
  • 賃金 = 単価 − 会社の必要経費 − 会社の利益 の構造
  • 2017・2019年の都道府県別データは未収録:一部年で全国平均のみ
  • 2026年版の都道府県別データ は順次収録予定(最新の収録状況は労務単価インデックスを参照)

データの一次情報・出典は/data/roumu-tanka/ の各項目に明記しています。

まとめ|3つの本質と次のステップ

  1. 業界の賃金水準は明確に上昇している:8年で+38.2%は公的データの事実
  2. 個人の手取りに反映されるかは会社次第:給与規程・資格・地域で差が出る
  3. 資格取得・会社選び・地域選択 が自分の収入に効く3つのレバー

次のステップとして、まずは自分の現状を業界水準と比較してみてください。

公的単価データは無料で誰でも確認できる業界共通指標です。自分の物差しとして活用してください(2026年6月時点)。