警備業法は、警備の業務内容に応じて 4つの業務区分(1号〜4号) を定めており、業界の運用基準・検定制度・警備員指導教育責任者・案件受託・独立開業のすべての基礎となる区分です(全体マップ)。業界の中の人・外の人がともに参照するべき基本フレームです。

本記事では、警備業の 4つの業務区分を、区分の概要・検定制度・業種別接続・業界論点の観点で整理します。個別事業者・特定案件の情報ではなく、業務区分の業界一般論として扱います。

1号警備・2号警備・3号警備・4号警備をひと目で

まずは業務区分の要点を、検索でよく問われる「1号警備とは」「2号警備とは」といった問いに応える形で整理します。

1号警備(施設警備)とは

施設内の盗難・事故・災害を防ぐ警備業務の総称です。オフィスビル・工場・学校・病院・空港・ホテル・データセンター・美術館など、業界内で最も多様な現場を含みます。機械警備(センサー・監視カメラ・遠隔監視)もこの区分に含まれる運用です。1号警備の資格は施設警備業務検定(2級・1級)で、1996年に制度化されました。

2号警備(雑踏警備・交通誘導警備)とは

雑踏の中で人や車両を安全に誘導する警備業務の総称です。コンサート・スポーツ・花火大会・国際会議などの雑踏警備と、道路工事・建設現場の交通誘導警備が含まれます。警備員数が業界内で最も多い業務区分で、公共工事設計労務単価の「交通誘導警備員A・B」の対象業種でもあります。

3号警備(貴重品運搬警備)とは

現金・貴金属・有価証券・重要書類・核燃料等の危険物を、輸送中に守る警備業務の総称です。業界内で高い信頼性が求められる業務区分で、1968年の三億円事件を契機に業界の運用基準が国際レベルに引き上げられた歴史があります。

4号警備(身辺警備)とは

企業経営者・芸能人・要人来日時の身辺警護を担う警備業務の総称です。業界内で最も専門性の高い業務区分のひとつで、警察のSP(Security Police)と補完的な関係にあります。1996年に身辺警備業務検定が制度化されました。

1. 4つの業務区分の全体像

業務区分の位置づけ

警備業法(e-Gov 警備業法)が定める 4区分は、業界の運用の基礎です。

警備業法第2条第1項の条文(一次情報)

警備業法(昭和47年法律第117号)第2条第1項は「警備業務」を、他人の需要に応じて行う次のいずれかに該当する業務と規定しています。

  • 一号:事務所、住宅、興行場、駐車場、遊園地等(以下「警備業務対象施設」という。)における盗難等の事故の発生を警戒し、防止する業務
  • 二号:人若しくは車両の雑踏する場所又はこれらの通行に危険のある場所における負傷等の事故の発生を警戒し、防止する業務
  • 三号:運搬中の現金、貴金属、美術品等に係る盗難等の事故の発生を警戒し、防止する業務
  • 四号:人の身体に対する危害の発生を、その身辺において警戒し、防止する業務

(出典:警備業法 第2条 e-Gov 法令検索

業務区分と業界の実務・業者数(令和6年公表データ)

業務区分業界での通称業者数(令和6年末)全業者中の比率
1号業務施設警備・機械警備6,974業者64.5%
2号業務雑踏警備・交通誘導警備8,800業者81.4%
3号業務貴重品運搬警備・核燃料等運搬警備662業者6.1%
4号業務身辺警備708業者6.5%

※全警備業者10,811業者ベース。1業者が複数の区分(1〜4号)を実施している場合は各区分に計上されるため合計は100%を超えます(出典:警察庁「令和6年における警備業の概況」)。

2号業者の比率が81.4%と圧倒的なのは、建設工事の交通誘導需要が全国津々浦々にあるため、地方の中小警備会社の多くが2号を主戦場としているためと業界内で説明されます。3号・4号の業者数が少ないのは、装備・訓練・審査の要件が厳しく参入障壁が高いためです。上場大手のセコム・ALSOK・CSPはいずれも1〜4号をフルカバーする総合型で、大手ほど区分横断で事業を組成する構造があります(警備会社の一覧・大手19社)。

本記事は業務区分の法令上の定義と業界の全体像を扱います。業者数構成のより詳細な分析(1号の細分類・経営的特徴・発注時の論点)は業務区分別の警備業者構成データ で深掘りしています。

業務区分と警備員検定

  • 1号業務:施設警備業務検定(2級・1級)
  • 2号業務:雑踏警備業務検定(2級・1級)・交通誘導警備業務検定(2級・1級)
  • 3号業務:貴重品運搬警備業務検定(2級・1級)・核燃料等危険物運搬警備業務検定(2級・1級)
  • 4号業務:身辺警備業務検定(2級・1級)

2. 1号業務(施設警備・機械警備)

概要

  • 施設警備:ビル・工場・店舗・学校・病院・空港・港湾・データセンター等の常駐・巡回警備
  • 機械警備:センサー・監視カメラ・遠隔監視による警備
  • 業界の実務:業界内で最も多様な現場が含まれる業務区分

検定制度

  • 施設警備業務検定 2級:1996年制度化(施設警備検定
  • 施設警備業務検定 1級:上位検定
  • 業界の運用:主要現場での有資格者配置

業種別接続

3. 2号業務(雑踏警備・交通誘導警備)

概要

  • 雑踏警備:コンサート・スポーツ・花火大会・国際会議等の大規模イベントの警備
  • 交通誘導警備:道路工事・建設現場の車両・歩行者誘導
  • 業界の実務:警備員数が業界内で最多の業務区分

検定制度

  • 雑踏警備業務検定 2級・1級:大規模イベント警備の運用基準(雑踏警備検定
  • 交通誘導警備業務検定 2級・1級:道路工事警備の運用基準
  • 公共工事設計労務単価との接続:交通誘導警備員A・B の単価区分(47県別労務単価

業種別接続

4. 3号業務(貴重品運搬警備・核燃料等運搬警備)

概要

  • 貴重品運搬警備:現金・貴金属・有価証券・重要書類等の輸送警備
  • 核燃料等危険物運搬警備:核燃料等危険物の輸送警備
  • 業界の実務:業界内で高い信頼性が求められる業務区分

検定制度

  • 貴重品運搬警備業務検定 2級・1級:業界の運用基準(貴重品運搬警備員検定
  • 核燃料等危険物運搬警備業務検定 2級・1級:核燃料等の輸送警備

業種別接続

業界史における位置づけ

1968年 三億円事件を契機に、業界の運用基準が国際レベルに引き上げられた業務区分です(業界史)。

5. 4号業務(身辺警備)

概要

  • 身辺警備:企業経営者・芸能人・要人来日時の身辺警護
  • 業界の実務:業界内で最も専門性の高い業務区分のひとつ

検定制度

  • 身辺警備業務検定 2級・1級:業界の運用基準(身辺警備業務検定
  • 業界の運用:警察との補完的な関係

業種別接続

6. 業務区分と警備員指導教育責任者

警備員指導教育責任者の位置づけ

警備業の認定を受けるには、営業所ごとに 警備員指導教育責任者 の資格保有者を配置する必要があります(認定制度)。

業務区分ごとの配置要件

  • 1号業務:1号業務の警備員指導教育責任者
  • 2号業務:2号業務の警備員指導教育責任者
  • 3号業務:3号業務の警備員指導教育責任者
  • 4号業務:4号業務の警備員指導教育責任者

複数の業務区分を扱う警備会社は、複数の警備員指導教育責任者の資格保有者を確保する運用が業界で観察されます。

7. 業務区分と警備員教育

新任研修・現任研修

  • 警備員の新任研修:警備業法 20時間以上
  • 警備員の現任研修:警備業法 10時間以上/年
  • 業務区分ごとの教育:業務区分ごとの追加教育(教育制度

警備員検定

  • 業務区分ごとの検定:本記事の該当セクションで整理
  • 業界の運用:資格取得の一般化

8. 複数業務区分を組み合わせる警備

複合警備の実務

多くの警備案件は複数の業務区分を組み合わせた複合警備として運用されます。

事例

  • 病院警備:1号(施設警備)+ 4号(要人来訪時)+ 2号(大規模イベント時)
  • 銀行警備:1号(店舗警備)+ 3号(現金輸送)+ 機械警備(ATM)
  • 美術館警備:1号(施設警備)+ 3号(作品搬入搬出)+ 4号(要人来館時)
  • 鉄道警備:1号(駅施設)+ 2号(雑踏警備)+ 4号(警乗警備)+ 3号(駅務員精算金)

業界の運用

  • 警備員指導教育責任者の複数確保:業務区分ごとの資格
  • 警備員検定の複数取得:警備員のキャリア形成
  • 業界の実務:業界内の実務ノウハウの蓄積

9. 業務区分と業界の中長期論点

警備業の 4つの業務区分は、業界の運用基準・検定制度・警備員指導教育責任者・案件受託・独立開業のすべての基礎となる区分です。人口減少・DX/省力化投資・業界再編等の中長期論点は、各業務区分ごとに異なる影響を業界に及ぼします。

主要な論点

  • 業務区分ごとの警備員確保:業界共通の課題
  • 業務区分ごとの DX/省力化投資:業種別の実装差
  • 検定制度の運用高度化:業界の質的維持
  • 複数業務区分対応:業界内の警備会社の対応力

10. 出典・参考データ

11. 警備ラボの関連レポート


編集部の見立て:警備業の 4つの業務区分は、業界の運用基準・検定制度・警備員指導教育責任者・案件受託・独立開業のすべての基礎となる区分で、業界の中の人・外の人がともに参照するべき基本フレームです。多くの警備案件は複数の業務区分を組み合わせた複合警備として運用され、業界内の警備会社は複数の業務区分に対応する体制構築が中長期の競争力の源泉となります。人口減少・DX/省力化投資・業界再編等の中長期論点は、各業務区分ごとに異なる影響を業界に及ぼします。警備ラボとしては、業務区分ごとの実務・業界動向・技術動向を継続的に整理し、業界の中の人・外の人がともに参照できる意思決定インフラを提供していきます。個別の業務区分・案件の詳細は各事業者・関係機関の公表資料を一次情報として確認してください。