日本で警備業を営むには、警備業法(昭和47年法律第117号)に基づき 都道府県公安委員会の「認定」を受ける必要 があります。認定は業界の入り口を規定する制度であり、業務区分・欠格事由・営業所要件・警備員指導教育責任者などの詳細が法令で定められています。

本記事では、警備業の認定制度を 公開情報の範囲で 整理し、これから警備業を始める事業者・業界を取材する記者・既存事業者の実務担当者の意思決定に資する形でまとめます。

1. 認定制度の全体像

認定の位置づけ

警備業法第4条は「警備業を営もうとする者は、都道府県公安委員会の認定を受けなければならない」と規定します。個人・法人を問わず、警備業を営むには認定取得が必須です。認定を受けずに警備業を営むと、警備業法違反として処罰対象になります。

「認定」は「許可」や「登録」と混同されることがありますが、警備業法上の正式名称は 認定 です。以下、本記事では法令に合わせて「認定」で統一します。

認定の管轄

認定を管轄するのは、都道府県公安委員会 です。事務手続きは各都道府県警察本部の生活安全部生活安全企画課などが担当します。営業所ごとに管轄が分かれるため、複数県で営業所を設ける場合は、原則として営業所所在地の都道府県ごとに手続きが必要です(主たる営業所の所在地の都道府県公安委員会が主管)。

2. 業務区分(1〜4号)

警備業法は警備業務を4つの区分に分類しています。認定申請時にどの区分の警備業務を営むかを指定します。

区分業務内容主な現場市場の特徴
1号施設警備(常駐・機械警備)事務所・住宅・興行場・遊技場・駐車場・遊園地警備業の売上構成の中心
2号交通誘導・雑踏警備工事現場・イベント・スポーツ観戦労務単価対象の業務
3号貴重品運搬警備現金輸送・貴金属・美術品運搬参入障壁高・少数プレイヤー
4号身辺警備(ボディーガード)要人警護・特殊対応特殊性高・対応事業者は限定的

1号業務:施設警備

事務所・住宅・興行場・遊技場・駐車場・遊園地などにおける盗難等の事故の発生を警戒し防止する業務 です。常駐警備・機械警備の両方を含みます。警備業の売上構成の中心となる業務区分です。

2号業務:交通誘導・雑踏警備

人若しくは車両の雑踏する場所・通行に危険のある場所における負傷等の事故発生を警戒し防止する業務 です。工事現場・イベント・スポーツ観戦などが該当します。公共工事設計労務単価(47都道府県別インデックス)が対象とするのはこの2号業務の交通誘導警備A・Bです。

3号業務:貴重品運搬警備

運搬中の現金・貴金属・美術品等の盗難等の事故発生を警戒し防止する業務 です。現金輸送などがこれに該当します。参入障壁が高く、上場3社を中心とする少数のプレイヤーが担う傾向があります。

4号業務:身辺警備

人の身体に対する危害の発生をその身辺において警戒し防止する業務 です。いわゆるボディーガード業務。特殊性が高く、対応可能な事業者は限定的です。

業務区分ごとに市場構造・単価・参入プレイヤーが大きく異なる点は、業界全体マップでも整理しています(警備業界 全体マップ 2026)。

3. 欠格事由

警備業法第3条は、認定を受けられない「欠格事由」を列挙しています。個人事業主本人および法人の役員がこれらに該当しないことが必要です。

主な欠格事由は以下の通りです。

カテゴリ具体的な内容
破産関連破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
刑罰関連禁錮以上の刑・警備業法違反の罰金刑に処せられ、その執行を終わり/受けることがなくなった日から5年を経過しない者
反社関連集団的・常習的に暴力的不法行為等を行うおそれがある者/暴力団員・暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
心身状況心身の故障により警備業務を適正に行うことができない者(内閣府令で定める)
年齢18歳未満の者
過去認定関連認定を取り消され、取消しの日から5年を経過しない者
未成年関連営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者(法定代理人が上記に該当する場合を含む)

欠格事由の正確な条文は e-Gov 警備業法 で確認してください。

4. 営業所と警備員指導教育責任者

営業所の要件

警備業を営む拠点となる 営業所 の設置が必要です。営業所には、警備員指導教育責任者を配置しなければなりません。営業所は物理的なオフィスであり、バーチャルオフィスは基本的に認められません(都道府県により運用差あり)。

営業所ごとに以下を配置・整備する必要があります。

項目内容位置づけ
警備員指導教育責任者業務区分ごとに1名以上を配置国家資格・営業所必置
警備員名簿氏名・住所・生年月日・配置状況などを記載法定備付書類
教育計画・教育実施記録新任教育・現任教育の実施記録法定備付書類
現場配置記録どの警備員をどの現場に配置したかの記録監督対応の基礎資料
服装・護身用具の届出書類制服・護身用具の変更時に届出変更時のみ

警備員指導教育責任者

警備員指導教育責任者 は、警備員の教育・指導を担う責任者です。国家資格として位置づけられ、公安委員会の資格者講習を修了し試験に合格することで取得できます。業務区分ごとに別資格 であり、1号業務の資格者は1号業務のみ担当可能です。

大手警備会社では複数区分の資格保有者を配置しますが、中小・零細事業者では資格者確保が経営課題となるケースが少なくありません。業界全体としても資格者の高齢化・後継者不足が指摘されています(警備員47.0%が60歳以上)。

5. 認定の手続き・費用・期間

手続きの流れ

一般的な認定申請の流れは以下の通りです。

  1. 事前準備:欠格事由の確認・警備員指導教育責任者の確保・営業所の整備
  2. 申請書類の作成:認定申請書・欠格事由該当書類・営業所届出書などを作成
  3. 管轄警察署への申請:営業所所在地の管轄警察署に提出
  4. 公安委員会審査:書類審査・必要に応じて実地確認
  5. 認定証の交付:認定を受けた場合、認定証が交付される
  6. 警備員の教育開始:新任警備員に対する法定教育を実施
  7. 業務開始

費用と期間の目安

認定に関する主な費用・期間の目安を以下に整理します。

項目目安備考
認定申請手数料おおむね 2万3千円前後都道府県により若干差あり
指導教育責任者資格取得費用講習受講料+試験手数料業務区分ごとに別途
営業所整備費用個別(賃料・什器・システム)立地・規模で変動
新任教育費用20時間×人数分の実施コスト内製 or 外部委託
標準審査期間概ね 40〜60日都道府県により差あり
準備期間含む実務目安2〜3ヶ月以上事前準備の充実度による

正確な手数料・期間は必ず所轄の都道府県警察本部で最新をご確認ください。

6. 認定の維持・更新・取消し

定期更新

認定の有効期間は 5年間 です。継続して警備業を営むには、有効期間満了前に更新申請を行う必要があります。更新時にも欠格事由の再確認・営業所の実態確認が行われます。

変更届出

営業所の新設・廃止、警備員指導教育責任者の変更、代表者の変更などがあった場合は、10日以内(一部は30日以内)に 変更届出 が必要です。届出漏れは処分対象になりうる点に注意が必要です。

認定取消しの主要事由

以下の場合、認定が取り消される可能性があります。

事由内容影響
欠格事由への該当認定後に欠格事由に該当することとなった場合認定取消し
警備業法違反行政処分(改善命令・営業停止等)を受けた場合認定取消しに発展の可能性
業務停止命令違反業務停止命令に反して業務を継続認定取消し
虚偽記載認定申請時の虚偽記載が判明認定取消し

認定取消しの日から5年間は再認定を受けられない ため、実質的に業界からの退出を意味する重い処分です。

7. 認定制度と業界構造

業界の入口の透明性

認定制度は、業界の入口を法令で規定する 透明性の高い制度 です。一方で、認定取得後の経営品質は事業者に委ねられるため、業界全体としての品質担保は業界団体(全国警備業協会)や検定制度によって補完されます。

中小・零細事業者の集中

警察庁データによれば、業界の 84.5%が「1営業所のみ」・37.5%が「9人以下」 という零細事業者中心の構造があります(警備業界 全体マップ 2026)。認定要件のハードルは相対的に低く、業者数の増加につながっていますが(業者数+6.9% vs 警備員ほぼ横ばい)、経営品質・警備員教育の水準にばらつきが生じている点が業界の課題です。

認定制度と業界の意思決定

新規参入・業界再編・M&A(警備業界のM&A再編フロントライン)を検討する事業者にとって、認定制度の理解は経営判断の前提です。特に、認定の承継・営業所統廃合・業務区分の追加取得などは、実務的に慎重な設計が必要です。

8. 業界の課題と論点

認定制度は業界の入口を明確化する優れた制度である一方、認定後の経営品質・警備員教育の実効性をどう担保するかは、業界全体の持続可能性に関わる論点です。

主要な論点は以下の通りです。

  • 警備員指導教育責任者の高齢化:世代交代と後継者育成
  • 教育の実効性:新任・現任教育の質を確保する仕組み
  • 業界内ルールの標準化:法令要件を超える業界標準の整備
  • DX投資による効率化:法定備付書類の電子化・管制SaaSによる記録自動化(警備業SaaS 5社比較

9. 出典・参考データ

10. 警備ラボの関連レポート


編集部の見立て:警備業の認定制度は、業界の入口を透明化する優れた法制度です。一方で、認定要件のハードルが相対的に低いことが業者数の増加・零細化に繋がり、業界の分散構造(業者数+6.9% vs 警備員ほぼ横ばい)を生む一因にもなっています。今後の業界の持続可能性は、認定後の経営品質・警備員教育の実効性を、業界団体(全国警備業協会)や検定制度でどう補完していくかにかかっているでしょう。警備ラボとしては、認定制度と業界構造の関係を継続的に整理し、業界の議論を促す提言を発信していきます。