警備業とは、警備業法(昭和47年法律第117号)に基づき、他人の需要に応じて施設・雑踏する場所・貴重品運搬・身辺の安全を守ることを業として行う民間産業です。都道府県公安委員会の認定を受けた事業者のみが営業できる 許認可事業 で、2024年末時点で全国に10,811業者が存在し、業界売上高は約3兆4,478億円に達しています(警察庁 令和6年概況)。

本記事では、警備業の 法令上の定義・産業規模・4業務区分・主要プレイヤー・許認可制度 を、警備業法条文と警察庁公表データという一次情報から整理します(2026年7月時点・要公式確認)。

警備業の法令上の定義(警備業法第2条第2項)

警備業法(e-Gov 法令検索)第2条第2項は、警備業を 「警備業務を行う営業」 と定義しています。ここで「警備業務」とは、同条第1項が定める4種類の業務(1号〜4号)を指します。

つまり、警備業=警備業法上の警備業務を営業として行う事業 と整理できます。個別の企業が「自称警備業」を名乗ることはできず、都道府県公安委員会の認定を受けた事業者だけが警備業を営めます(警備業法第4条)。

警備業の産業規模(警察庁「令和6年における警備業の概況」ベース)

警察庁が毎年公表する「警備業の概況」は、業界全体の規模を把握する最も信頼性の高い一次データです。令和6年(2024年)末時点の主要指標:

指標数値備考
業界売上高約3兆4,478億円2024年集計
警備業者数10,811業者前年比+137業者(+1.3%)
警備員総数587,848人前年比+2,980人(+0.5%)
機械警備対象施設3,423,470箇所前年比+191,771箇所(+6.4%)

(出典:警察庁「令和6年における警備業の概況」 PDF

売上高約3.4兆円は 国内の労働集約型サービス産業の中でも中規模 に位置づけられます。建設業・製造業・卸小売業と比べると小規模ですが、警備員数58.7万人という雇用規模は、社会インフラを支える重要産業として業界内で認識されます。

業界規模の年次推移

警察庁データから見える業界の成長傾向:

  • 機械警備対象施設:2020年 317.6万件 → 2024年 342.3万件(+7.8%、5年で拡大)
  • 警備業者数:2020年 10,113 → 2024年 10,811(+6.9%、業者数は増加傾向)
  • 警備員総数:2020年 588,364 → 2024年 587,848(-0.1%、実質横ばい
  • 1社あたり警備員数:58.2人 → 54.4人(-6.4%、業界の零細化が進行

需要側(機械警備対象施設)が拡大する一方、供給側(警備員数)が横ばいという構造的な人手不足が業界の中長期論点です(警備業界「人手不足」の正体)。

警備業と警察・自衛隊・消防の違い

警備業は民間事業者が担う点で、公的組織である警察・自衛隊・消防と明確に区別されます。

項目警備業警察自衛隊消防
根拠法警備業法警察法・警察官職務執行法自衛隊法消防組織法
身分民間人国家公務員特別職国家公務員地方公務員
依頼者契約主(民間)国民・国家国民・国家国民・地方自治体
費用負担契約主税金税金税金
権限契約範囲内・私人としての権利職務執行権限防衛出動権限等消防活動権限
武器携帯原則不可拳銃等携帯可火器携帯可原則なし

警備業は「民間の需要に応じた契約サービス」 であり、公的機関の職務執行とは根本的に位置づけが異なります。警備員は現行犯逮捕等の私人としての権利を行使できますが、警察官の職務執行権限は持ちません。

警備業の4業務区分

警備業法第2条第1項は警備業務を4区分に分類しています。

業務区分通称業界での業者数(令和6年)
1号業務施設警備6,974業者(64.5%)
2号業務交通誘導・雑踏警備8,800業者(81.4%)
3号業務貴重品運搬警備662業者(6.1%)
4号業務身辺警護708業者(6.5%)

※1業者が複数区分を営む場合は各区分に計上されるため合計は100%を超えます。

2号業者が81.4%と最多なのは、建設工事の交通誘導需要が全国津々浦々にあるため、地方の中小警備会社の主戦場が2号であるためです。各区分の詳細(法令上の定義・実務内容・業種別接続)は1号・2号・3号・4号警備の違い で整理しています。

警備業の許認可制度

警備業を営むには、警備業法第4条により 都道府県公安委員会の認定 を受ける必要があります。認定には以下の要件があります:

主な認定要件

  1. 欠格事由に該当しないこと(警備業法第3条)
    • 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
    • 禁錮以上の刑・警備業法違反等で刑を受けた者(一定期間経過なし)
    • 暴力団員等
  2. 営業所ごとに警備員指導教育責任者を配置(同法第22条)
  3. 警備員教育の実施(同法第21条)
  4. 業務区分ごとの資格・体制 の整備

認定制度の詳細は警備業の認定制度と1号・2号・3号・4号業務 で整理しています。

警備員の要件

警備員として業務に従事するには、以下の条件を満たす必要があります:

  • 18歳以上(警備業法第14条)
  • 欠格事由に該当しないこと
  • 警備業法に基づく新任研修(20時間以上)の修了
  • 現任研修(10時間以上/年)の継続受講

警備員のキャリア・仕事内容の詳細は警備員とは を参照してください。

警備業界の主要プレイヤー

業界内で「大手」として広く認識される中核企業は以下5社です:

企業上場2026年決算 連結売上特徴
セコム東証プライム(9735)約1兆2,569億円業界1位・多角化コングロマリット・機械警備パイオニア
ALSOK(綜合警備保障)東証プライム(2331)約5,970億円業界2位・総合型・全国展開
セントラル警備保障(CSP)東証プライム(9740)約787億円業界3位・JR東日本と資本提携・首都圏中心
東洋テック東証スタンダード(9686)──関西基盤・セコム持分法適用関連会社(約25%出資)
全日警(全日本警備保障)非上場──空港警備に強み・独立系

上位3社(セコム・ALSOK・CSP)が業界の売上規模の相当部分を占める寡占構造がありつつ、業界全体で見ると10,811業者のうち大半は地方の中小業者という 「寡占+分散」の混在構造 が警備業界の特徴です。詳細は大手警備会社の売上ランキング を参照してください。

業界外プレイヤー(警備SaaS・AIベンダー)

近年、警備業を支援する 業界外プレイヤー も業界内での存在感を高めています:

  • 警備管制SaaSKOMAINU(DJUGGERNAUT)、KUMOCAN(straya)、警備フォース(アトミックソフトウェア)等
  • AI技術ベンダー:ABEJA、オプティム、SEQSENSE等
  • 警備ロボット:SEQSENSE、Knightscope等

業界外プレイヤーとの資本関係・戦略提携の状況は警備業界の資本関係マップ および警備業界AI実装企業マップ で整理しています。

警備業界の中長期論点

警察庁データと業界公表資料から見える中長期の主要論点:

  1. 人手不足の構造化:警備員数横ばい・業者数増加・機械警備対象施設拡大の3重圧力
  2. 高齢化:60歳以上警備員比率47.0%(警備業界の高齢化46%レポート
  3. DX/省力化投資:警察庁 令和7年 省力化投資促進プラン(省力化投資
  4. 業界再編:M&A・事業承継の増加(警備業界のM&A再編フロントライン
  5. 法規制対応:2024年問題(時間外労働)・2025年問題(社保適用拡大)等(警備業界の2025年問題

警備業界の関連法令・団体

主要な関連法令

  • 警備業法(昭和47年法律第117号):業界の根拠法
  • 労働基準法:警備員の労働条件
  • 労働者派遣法:警備業務は派遣禁止業務(警備員が派遣で働けない理由
  • 警察官職務執行法:警察との関係

主要な業界団体

  • 全国警備業協会(ajssa):業界の全国統括団体(公式
  • 各都道府県警備業協会:地域ごとの業界団体

編集部の見立て

警備業は、警備業法という明確な根拠法 に支えられた 民間の許認可事業 として、日本の社会インフラを支える重要産業の一角を担っています。市場規模約3.4兆円・警備員58.7万人・業者10,811という規模は決して小さくなく、しかも近年の業界動向(人手不足の構造化・DX投資の加速・業界再編)は、業界の質的な転換期 にあることを示しています。

警備業を理解する上で重要なのは、「警備業=会社」と「警備員=人」の区別「警備業=民間契約サービス」と「警察=公的機関」の区別、そして 警備業法第2条第1項が定める4区分の業務内容の理解 です。これらの基本を押さえた上で、業界の規模・主要プレイヤー・中長期論点を追うと、警備業という産業の全体像が体系的に見えてきます。

警備ラボとしては、業界の意思決定インフラとして、警備業の一次情報(警察庁・法令・上場企業IR)を継続的に整理し、業界の中の人・外の人がともに参照できる知識基盤を提供していきます。

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