国土交通省が公表した2026年(令和8年)3月適用の公共工事設計労務単価で、警備員(交通誘導A)の全国平均は 18,911円/日(前年比+5.8%)、警備員B(一般道での交通誘導)は 16,749円/日(同+6.7%) となりました。8年連続の上昇かつ過去最高ペースの改定で、警備業界の賃金構造が大きく変わりつつあることを示しています(2026年6月時点)。
本記事では、この2026年発表データから読み取れる 業界の構造変化 を、A/B格差・直近モメンタム・経営/発注/現場への影響の3軸で整理します。元データは/data/roumu-tanka/ に出典PDF付きで集約しています。
※ 本記事の単価は国土交通省「公共工事設計労務単価」交通誘導警備員A・Bの全国平均(8時間あたり、wage本体)。民間案件の料金や個別の警備員賃金とは異なります。

警備労務単価の主要県別推移(出典:警察庁・国土交通省/編集部整理)
1|2026年発表の主要数値
国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価」プレスリリースによれば、警備員の全国平均は次のとおりです。
| 区分 | 2025年(円/日) | 2026年(円/日) | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 交通誘導警備員A | 17,931 | 18,911 | +5.8% |
| 交通誘導警備員B | 15,752 | 16,749 | +6.7% |
| AB格差 | 2,179 | 2,162 | -17円 |
出典:国土交通省 報道発表「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価」(参考:令和7年版PDF)。元データの一覧は警備労務単価インデックス に集約しています。
国土交通省は同発表で、警備員を含む全職種平均で「平成25年度から14年連続の引き上げ」「全国全職種平均で前年度比+◯%」と説明しており、警備員もそのトレンドの延長線にあります。
警備員A:高速道路等の交通誘導
警備員Aは「高速自動車国道、自動車専用道路など、政令で定める道路における交通誘導」が対象です。検定資格保有者を中心に配置される高難度の業務で、全国平均では18,911円という水準に達しました。詳細な区分は交通誘導警備(2号)の仕事内容 を参照してください。
警備員B:一般道での交通誘導
警備員Bは一般道での交通誘導で、検定資格者の配置義務がない区間が中心です。今回の改定でBが+6.7%とAを上回ったのは、人手不足が業界全体に広がるなかで、検定資格者以外の現場確保も困難になっている現状を反映していると読み取れます。
2|直近3年で見える「ペース加速」
警備員A全国平均の前年比推移は次のとおりです。
| 年 | 警備員A wage | 前年比 |
|---|---|---|
| 2020 | 14,053 | +2.4% |
| 2021 | 14,364 | +2.1% |
| 2022 | 14,873 | +3.7% |
| 2023 | 15,967 | +7.1% |
| 2024 | 16,961 | +6.4% |
| 2025 | 17,931 | +5.7% |
| 2026 | 18,911 | +5.8% |
2020〜2022年は前年比+2〜3%台でしたが、2023年以降は3年連続で+5%台後半〜+7%台が続いており、明らかに水準が切り上がっています。直近3年(2023→2026年)の累計上昇率は +18.4%、年率換算で+5.8%相当です。
8年連続上昇の構造的な背景は警備の労務単価は8年で+38%上昇|背景の構造要因 で整理しています。
「過去最高ペース」の意味
2023年以降のペースは、最低賃金改定が二桁円幅の引き上げに転換した時期と一致します。厚生労働省「地域別最低賃金」は2023年・2024年・2025年と連続で全国加重平均+50円前後の引き上げが続いており、設計労務単価への波及がはっきりと現れています。
3|業界への3つの影響
2026年発表データから、業界の経営・発注・現場という3つの軸で読み取れる構造変化を整理します。
影響①:経営層の労務費マネジメント
警備会社の売上原価に占める人件費比率は元々高く、おおむね70〜80%が業界の通念です。年率+5〜7%の単価上昇は、契約スライド条項がない案件では即座に利益率を圧迫します。
経営対応の論点は次の3つです。
- 既存契約のスライド条項見直し:最低賃金改定・労務単価改定との連動条項を契約に明記
- 新規契約の単価見直し:見積もり段階で年度内の最賃改定リスクを織り込む
- 業務効率化の投資:勤怠管理・配置最適化のDXで間接費を抑制
中小警備会社の経営差別化の具体策は中小警備会社の差別化戦略 で整理しています。
影響②:発注者の予算と契約見直し
公共発注者は設計労務単価の改定を直接予算に反映しますが、民間発注者・元請けには明確な義務はありません。それでも、人手不足のなかで警備員を確保するには、設計労務単価相応の支払いが事実上不可避となりつつあります。
発注検討者は次の3点を契約段階で押さえる必要があります。
- 基準単価の根拠:見積もりが何の単価をベースにしているか
- 改定条項:年度内に最賃・設計労務単価が改定された場合の取扱い
- 解約予告期間:賃金転嫁が困難な場合の出口条項
発注実務の手順は警備会社の選び方ガイド で整理しています。費用感の試算は警備費用シミュレーター もご活用ください。
影響③:現場の警備員の処遇
設計労務単価は「現場警備員の手取り賃金」を直接決めるものではありませんが、業界の賃金水準を引き上げる方向に作用します。資格者(交通誘導A検定2級・1級)の単価優位はAB格差として残っており、資格取得は引き続き重要な収入アップ手段です。
- 検定取得による単価優位は依然として大きい
- ただし非資格者(B区分)の単価も急上昇しており、業界の底上げが進行
- 夜間・深夜帯の割増賃金は労基法で別途義務(年収完全ガイド )
資格・検定の取得順序は警備員の資格・検定一覧 で整理しています。
4|過去最高ペースは続くのか
国土交通省は2027年以降の設計労務単価について公式の見通しを示していませんが、外部環境からは次の見方ができます。
続く可能性が高い理由
- 政府目標「2020年代半ばに全国加重平均1,500円」が示す最低賃金の継続改定
- 建設業の技能労働者高齢化(55歳以上比率が業界平均より高い水準)
- 警備員の有効求人倍率の高止まり(職業計平均より高い)
- 物流・観光・大規模再開発の警備需要
鈍化リスク要因
- 急激な景気後退による公共投資縮小
- 設計労務単価制度そのものの方針転換
- AI・IoTによる機械警備の代替進展(機械警備のすべて )
これらはあくまで仮説で、将来を保証するものではありません。最新動向は当インデックスで継続更新していきます。
5|データの限界と読み方
本記事の数値を扱ううえで、以下に注意してください。
- 8時間あたりの単価:割増賃金は別途
- 全国平均値:都道府県別の格差は大きい(愛知トップの理由 ・地域格差はなぜ広がるか )
- wage(賃金)のみ:必要経費・利益・福利厚生費は別管理
- 公共工事の設計単価:民間料金とは仕組みが異なる
- 改定タイミング:3月適用のため、新年度(4月)契約に向けた論点
詳細データと出典PDFは警備労務単価インデックス(/data/roumu-tanka/) に集約しています。
まとめ|2026年データが業界に投げかけたメッセージ
- 2026年:警備員A=18,911円(+5.8%)、警備員B=16,749円(+6.7%)
- 直近3年は累計**+18.4%**で過去最高ペース
- 警備員Bの上昇率がAを上回り、業界の底上げが進行
- 経営は契約スライド条項と価格転嫁の再設計が急務
- 発注者は基準単価の明示と改定条項の整備が必要
- 現場警備員は資格取得による単価優位を確保しつつ、業界全体の底上げも享受
警備の労務単価は、もはや「微増を毎年積み重ねる」業界ではなくなりました。年率+5〜7%の世界に入ったことを前提に、契約・発注・キャリア設計を組み直す段階にあります。
データ詳細は/data/roumu-tanka/ を、長期トレンドは8年で+38%上昇の構造要因 を、都道府県分析は愛知トップの理由 ・地域格差はなぜ広がるか を、それぞれ参照してください。