「警備会社を選ぶときに、規模はどう判断材料にすべきか?」――この問いに、感覚論ではなく 公的データ で向き合うための解説記事です。

警察庁「令和6年における警備業の概況」(2024年末時点)によれば、警備業者10,811社のうち 80.2%が従業員50人未満、37.5%が9人以下、84.5%が1営業所のみ(出典:警察庁 警備業の状況)。本記事はこの数字が 発注者の意思決定にどう関わるか を整理します(2026年6月時点)。

※ 本記事は警察庁が公表する全国計の数値に基づく一般的整理です。各案件の実勢価格・契約条件・対応可否は地域・時期・発注内容で大きく変動します。実際の発注時は必ず複数社からの見積もりと最新の情報で個別確認してください。

このガイドが想定する発注者

本記事は、次のような 法人・団体としての発注者 を想定しています。

  • 建設・道路工事業:交通誘導警備の継続発注
  • マンション管理組合・ビル管理会社:施設・常駐警備の発注
  • 店舗・小売事業者:開閉店警備・防犯警備の発注
  • イベント主催者:雑踏警備・会場警備の発注
  • 自治体・公共系発注者:公共工事・公共施設の警備発注

警備会社選びの基本的な手順は警備会社の選び方ガイドで別途整理しています。本記事は 業界の規模構造そのもの に焦点を絞ります。

このデータの読み方|先に押さえる前提

警察庁「警備業の概況」とは

警察庁生活安全局が 毎年公表 する、警備業法に基づく警備業の全国統計です。本記事で扱う数値はすべて 令和6年版(2024年末時点) の実値です。

警察庁データの「業者規模」区分

警察庁は警備業者の従業員規模を以下の9区分で集計しています。

区分業者数割合
1,000人以上530.5%
500〜999人780.7%
100〜499人9278.6%
50〜99人1,0759.9%
30〜49人1,27911.8%
20〜29人1,27711.8%
10〜19人2,06419.1%
6〜9人1,20511.1%
5人以下2,85326.4%
合計10,811100.0%

指標①:50人未満が80.2%という業界構造

30〜49人 + 20〜29人 + 10〜19人 + 6〜9人 + 5人以下 = 80.2%。警備業者の 8割超が従業員50人未満 の事業者です。

これは、警備業が 資本集約型ではなく労働集約型 で、地域単位の参入障壁が比較的低いことを示しています。10,811社という業者数も、人口比で見れば1都道府県あたり平均230社程度。地域に根ざした事業者 が業界を支えている構造です。

指標②:9人以下が37.5%

6〜9人11.1% + 5人以下26.4% = 37.5%。警備業者の 4割近くがごく小規模 の事業者です。

これは「警備員を数名抱える地域事業者」がいかに多いかを示す数字です。地域密着の機動力という強みがある一方、 後述する緊急時バックアップや複数現場同時対応には構造的限界 がある層でもあります。

指標③:1営業所のみが84.5%

営業所数別の業者分布は以下のとおりです。

営業所数業者数割合
30営業所以上210.2%
20〜29営業所130.1%
10〜19営業所780.7%
6〜9営業所1681.6%
5営業所700.6%
4営業所1521.4%
3営業所3042.8%
2営業所8597.9%
1営業所9,13884.5%

業者の84.5%(9,138社)が1営業所のみ。営業所を10以上構える業者は1.0%(112社)にとどまります。

地理的にカバーできる範囲が限定的であることを意味し、複数地点を跨ぐ案件、広域カバーが必要な発注では、業者選択肢が大きく絞られる という構造です。

指標④:100人以上の業者は1,058社(9.8%)

逆側を見ると、従業員100人以上の業者は以下:

  • 1,000人以上:53社(0.5%)
  • 500〜999人:78社(0.7%)
  • 100〜499人:927社(8.6%)
  • 合計:1,058社(9.8%

100人以上を抱える業者は全業界のおよそ1割。広域・複数現場の同時対応・大型イベント対応 などのスケールメリットを期待する場合、選択肢はこの層が中心になります。

指標⑤:5年で業者数は+6.8%増加

警察庁データの5年推移は以下のとおりです。

業者数前年比
2020年末10,124
2021年末10,209+0.8%
2022年末10,534+3.2%
2023年末10,672+1.3%
2024年末10,811+1.3%

5年で+687社(+6.8%)の純増。同期間に警備員数は -516人(-0.09%)でほぼ横ばいだったため、業者は増えるが警備員は増えない → 1社あたり警備員数は縮小 という構造が進んでいます。

  • 2020年:588,364 ÷ 10,124 = 約58.1人/社
  • 2024年:587,848 ÷ 10,811 = 約54.4人/社

業者の小規模化が、業界平均値としても進行している状況です。

業務区分別 業者カバー率

警察庁データでは、業務区分別の業者数も公表されています(兼業可のため合計100%超)。

業務区分業者数業者カバー率
1号警備(施設)6,974社64.5%
2号警備(交通誘導・雑踏)8,800社81.4%
3号警備(貴重品・現金等運搬)662社6.1%
4号警備(身辺)708社6.5%

1号警備(施設)の細分

内訳業者数割合
施設6,774社62.7%
巡回2,875社26.6%
保安1,535社14.2%
機械542社5.0%
住宅対象387社3.6%
住宅以外476社4.4%
空港保安79社0.7%

2号警備(交通誘導・雑踏)の細分

内訳業者数割合
交通誘導8,274社76.5%
雑踏5,137社47.5%

2号警備(交通誘導)が業者カバー率76.5%と業界の主力業務 であり、選択肢も最も多い領域です。一方、3号(貴重品)・4号(身辺)は業者数が限られる希少領域 で、価格交渉・継続発注の難易度がやや上がる構造になります。

業者規模の特徴比較

業者規模ごとの特徴を整理すると以下のような対比になります。

大規模事業者(100人以上:1,058社)

  • 強み:広域カバー、人員バックアップ、複数現場同時対応、品質マニュアルの整備
  • 留意点:価格は相対的に高め、現場担当者の交代頻度、コミュニケーションの距離感

中規模事業者(10〜99人:4,418社、約40.9%)

  • 強み:地域カバーとスケールのバランス、現場と経営層の距離が比較的近い、価格と品質の中間
  • 留意点:複数県の広域案件は対応可否を要確認

小規模事業者(9人以下:4,058社、約37.5%)

  • 強み:地域密着、機動力、経営者の現場関与、コスト競争力
  • 留意点:人員バックアップに限界、緊急時の代替要員確保が困難、複数現場の同時対応に制約

※「強み/留意点」は一般的な構造的特徴であり、個別企業の実態は別途確認が必要です。

発注者が知っておくべきリスクと機会

リスク①:発注先の人員バックアップ限界

小規模業者では、当日欠員・体調不良が発生した場合の代替要員確保が構造的に難しい場合があります。毎日・継続案件 ほど、人員バックアップ体制を事前に確認すべきです。

確認ポイント:

  • 当日欠員時の代替要員確保プロセス
  • 直近1年の欠員発生件数・対応実績
  • 緊急時の連絡フロー

リスク②:複数現場の同時対応に制約

イベント・大規模工事など 複数地点で同時稼働 が必要な発注では、1営業所84.5%の業界構造を踏まえると、選択肢が大きく絞られます。

確認ポイント:

  • 営業所数とカバー地域
  • 同時に何現場まで対応した実績があるか
  • 他社との協業(協力会社ネットワーク)の有無

リスク③:契約継続の中断リスク

小規模業者では、 経営者の引退・事業承継・突発事象 が事業継続に直結する場合があります。長期継続発注では、後継体制の確認も視野に入る項目です。

機会①:地域密着の機動力

地域に1営業所を構える業者は、現場までの移動時間が短く、緊急対応が早い 強みがあります。地域単発案件・地元イベントなどでは大規模業者よりもむしろフィットするケースがあります。

機会②:きめ細かい対応と価格交渉

小規模業者は経営者と現場が近く、個別事情への柔軟な対応 が期待できます。価格面でも、間接コストが少ない分、競争力のある条件が出やすい場合があります。

機会③:長期的なパートナー化

地域密着型の業者と長期関係を築くことで、業界知見・地域ノウハウを共有するパートナー として活用できる場合があります。発注価格だけでなく、こうした関係性の価値も評価対象です。

発注時に確認すべき5項目

業者規模を判断材料に組み込む場合、次の5項目を最低限確認することを推奨します。

① 警備員総数と内訳

  • 常用警備員 vs 臨時警備員
  • 業務区分別の経験者数
  • 業界平均は1社あたり約54.4人(参考値)

② 営業所数とカバー地域

  • 営業所数と所在地
  • カバー可能な都道府県・市区町村
  • 自社の発注地点との距離

③ 業務区分別の実績

  • 1号・2号・3号・4号のうち、どの区分の実績が中心か
  • 自社の発注内容との適合度

④ 人員バックアップ・緊急対応体制

  • 当日欠員時の代替要員確保プロセス
  • 緊急時の連絡フロー
  • 直近の対応事例

⑤ 契約条項と料金改定基準

  • 公的単価連動・最低賃金連動の有無
  • 年次見直しの規定
  • 契約継続の安定性

詳しい比較フレームは警備会社の選び方ガイド、業務別の発注ポイントは下記からどうぞ。

案件単位の費用試算は費用シミュレーターで、地域・人数・時間帯を入れた目安計算ができます。

このデータの限界と注意点

本記事で扱った数値は、警察庁が公表する 全国計の業者規模分布 に基づくものです。以下の点に留意してください。

  • 都道府県別の業者規模分布は未公表:地域差は反映されていない
  • 業者規模 × 業務区分のクロス集計は未公表:「100人以上で3号警備をやっている業者」のような細分情報は別途調査が必要
  • 売上高データは未公表:警察庁の概況には収録されていない
  • 個別業者の特定情報は本データに含まれない:個別検討は各業者への直接ヒアリングが必要

データの一次情報・出典は/data/keibi-gyoukai/の各項目に明記しています。

まとめ|発注者が今すぐ着手すべき3つの備え

  1. 業界の80.2%が50人未満・84.5%が1営業所 という構造を発注設計の前提に置く
  2. 業者規模と案件規模・地理範囲の整合性 を最初のスクリーニング軸にする
  3. 人員バックアップ・契約改定条項・緊急対応体制 を見積もり依頼段階で確認

次のステップ:

警察庁の公的データは無料で誰でも確認できる業界共通指標です。発注設計の物差しとして活用してください(2026年6月時点)。