工事現場の警備発注は、建設・解体・道路工事・舗装工事の発注担当者にとって、工期・安全・予算 に直結する重要な意思決定です。警備員の配置は所轄警察署や道路管理者との協議事項に組み込まれていることが多く、 誰に・何人・いつ・いくらで 発注するかを早期に詰める必要があります。

本記事では、工事現場の警備発注を検討する発注者(建設会社・解体業者・舗装業者・施主側現場代理人・自治体発注事業の元請け)向けに、業務区分・単価相場・人員配置の目安・警備会社選びを業界視点で整理します(2026年6月時点)。

※ 本記事は2026年6月時点の公開情報・公的単価データ・業界一般論に基づきます。実際の単価・配置・契約条件は地域・時期・現場・各社方針で大きく異なります。必ず複数社の最新見積もりと所轄警察署・道路管理者の指導内容に基づいてご判断ください。

工事現場の警備の業務区分|1号と2号

警備業務は警備業法上、1号〜4号の業務区分に分かれています(警備業法の基本 参照)。工事現場で発注対象になるのは主に 1号警備と2号警備 です。

2号警備(交通誘導・雑踏警備)

工事現場で最も発注頻度が高いのが2号警備です。

  • 交通誘導警備:道路工事・建設現場の出入口・車線規制現場での車両・歩行者の誘導
  • 雑踏警備:イベント・祭礼での人流整理(工事現場では適用範囲は限定的)

工事現場の警備員配置のほとんどは交通誘導警備に該当します。交通誘導警備業務検定(1級・2級)の保有者の配置が、契約や所轄警察署の協議で求められる場合があります。具体的な検定の位置づけは交通誘導警備2級警備員の資格一覧で整理しています。

1号警備(施設警備)

工事用地全体を1つの施設として 24時間警戒する場合や、資機材置場の夜間警戒は1号警備に該当します。

  • 大規模工事の 長期間にわたる用地全体の警備
  • 高額資機材を保管する 資機材ヤードの常駐警備
  • 工事完了前後の オフィスビル・マンションの竣工前内覧期警備

工事の規模・期間・夜間体制によって、2号単独か1号併用かを判断します。

業務区分の判別方法

  • 道路上での車両・歩行者の誘導が中心 → 2号
  • 工事用地内の警戒・出入管理・盗難防止が中心 → 1号
  • 両方必要 → 2号+1号の併用発注

発注検討の早い段階で、警備会社や所轄警察署との協議で業務区分を明確にしておくと、有資格者要件と単価設計が整理しやすくなります。

工事警備の単価相場|公共工事設計労務単価をベースに

工事警備の単価には 公的な定価 はありませんが、 公共工事設計労務単価 が業界の参考値として広く使われています。

公共工事設計労務単価とは

国土交通省が 毎年3月 に公表する、公共工事の予定価格算定のための基準労務単価です。51職種について都道府県別の日額単価が公表されており、警備業は 交通誘導警備員A・B の2区分があります。

区分一般的な定義
交通誘導警備員A交通誘導警備業務検定の保有者など、一定の有資格者
交通誘導警備員BA区分以外の警備員

最新の都道府県別単価データは警備の労務単価【最新版】 で随時更新しており、過去推移は警備員労務単価の8年推移 で確認できます。

民間取引の請求単価の構造

民間の警備発注では、労務単価がそのまま請求単価になるわけではなく、 諸経費・管理費・利益 が上乗せされます。一般的な構造は次のとおりです。

内訳内容
労務単価警備員本人への支給ベース
法定福利費社会保険料・労災保険等の事業者負担
装備費・交通費装備品・現場までの交通費
管理費営業所運営・指導教育責任者の管理コスト
利益警備会社の利益

業界の一般的な傾向として、請求単価は 労務単価の1.3〜1.6倍程度 に設定されるケースが多い、と言われています(あくまで業界目安・各社見積もりで個別変動)。

時間帯別の割増の考え方

時間帯一般的な割増
通常時間帯(8〜17時等)ベース単価
早朝(5〜8時)早朝割増(社によって扱い差)
深夜(22〜翌5時)深夜割増(労基法割増分が反映)
休日休日割増

割増率は警備会社・契約により異なるため、見積もり比較時に 同一の業務仕様 で確認するのが重要です。労務単価ベースの相場感のシミュレーションは警備の労務単価シミュレーター で試算できます。

単価上昇トレンドと2026年以降の見通し

公共工事設計労務単価は、 2014年以降12〜13年連続で上昇 しており、警備業の単価も継続的な上昇基調にあります。最低賃金の継続的な引き上げ、社会保険適用拡大、人手不足の構造を背景に、 2026〜2027年も上昇基調が続く可能性が高い との見方が業界では一般的です。労務単価の中期見通しは警備員労務単価2026年予測 でも整理しています。

発注側としては、 複数年契約での単価固定リスク を踏まえ、最低賃金改定や労務単価改定をトリガーにした単価改定条項を契約に組み込むのが安全です。

工事規模別の人員配置目安

警備員の配置人数は所轄警察署との協議・道路使用許可・道路工事保安施設設置基準(各都道府県警察)等に基づき個別に決まります。以下は 業界の一般的な目安 で、最終決定は現場の交通量・見通し・工期・施工計画で変動します。

道路工事

工事内容配置人数目安補足
片側交互通行(直線・見通し良好)2〜3名上下流端+現場
片側交互通行(カーブ・見通し不良)3〜4名中継員追加
車線規制(4車線道路)3〜5名上下流端+場内
全面通行止め(迂回案内)4〜8名迂回路ポイント配置
夜間道路工事2〜4名視認性確保が前提

建設工事

工事内容配置人数目安補足
戸建て解体1〜2名出入口+通行人案内
中高層建築(ゲート+場内)3〜5名出入管理+場内交通整理
大規模建築(複数ゲート)5〜10名ゲート別配置+場内
鉄道近接工事別途協議鉄道事業者との取り決め
大規模再開発(場内+周辺道路)10名以上工区別配置

公共工事の配置基準

公共工事では、各都道府県の 道路工事保安施設設置基準共通仕様書 に、配置人数の目安が明示されていることがあります。元請け施工計画書の作成時に、所轄警察署との事前協議結果を反映するのが通例です。

警備会社の選び方|工事警備の現場で重視する観点

工事現場の警備会社を選ぶ際の確認軸を整理します。詳細な汎用ガイドは警備会社の選び方ガイドも参照してください。

① 警備業認定と号区分

警備業を営むには 都道府県公安委員会の認定 が必要です(警備業法第4条)。工事現場で発注する場合は、 2号警備の認定 を取得している会社を候補にします。1号も併用する場合は 1号と2号両方の認定 が必要です。

認定番号は公式サイト・見積書・契約書に明記されているのが通常で、無記載の場合は確認が必要です。

② 警備員指導教育責任者の選任

警備業者は営業所ごと・業務区分ごとに 警備員指導教育責任者 を選任する義務があります(警備業法第22条)。教育記録の整備・新任教育の実施は事業者の法定義務であり、選任体制が整っている会社は教育違反のリスクが低い傾向にあります。

教育違反による行政処分の事例は警備業の教育違反|行政処分事例集で整理しています。

③ 有資格者の在籍状況

工事現場の交通誘導警備には、 交通誘導警備業務検定1級・2級 の保有者の配置が求められる場合があります(高速自動車国道・自動車専用道路では2級以上の検定合格者の配置が法令で定められています)。

確認項目:

  • 1級・2級保有者の人数
  • 工事規模別の有資格者配置可否
  • 警備員指導教育責任者の選任状況

④ 同種工事の実績

  • 道路工事・建設工事・解体工事・舗装工事などの 発注予定工種 の経験
  • 発注予定エリア での実績
  • 所轄警察署との 協議経験

⑤ 当日欠員時のバックアップ体制

工事現場の警備は 当日欠員が即工程遅延 に直結します。

  • バックアップ要員の配置体制
  • 欠員時の連絡フロー
  • 配置人数の調整可否

⑥ 単価と諸経費の透明性

  • 労務単価ベースか時間単価ベースか
  • 諸経費(交通費・装備費・管理費)の内訳
  • 深夜・休日割増の率
  • 最低発注時間(短時間案件での最低計上時間)

公共工事における労務単価の参考値は警備の労務単価【最新版】 で都道府県別に確認できます。民間発注の相場検証にも活用可能です。

⑦ 保険・賠償体制

工事現場では、警備員自身の労災・第三者への対物対人事故が起こり得ます。

  • 警備業務賠償責任保険の加入
  • 補償額の上限
  • 労災保険の加入

業界規模・大手と中小の特性は警備業界の大手警備会社まとめ でも整理しています。工事警備は地域密着の会社が小回りで強みを発揮しやすい一方、広域工事・複数現場同時発注では全国体制の会社の優位性もあります。

工事現場の警備発注の流れ

発注の流れを6ステップで整理します。

Step 1:要件定義

  • 工種(道路工事・建設工事・解体工事・舗装工事)
  • 工事場所と道路使用許可の条件
  • 工期・1日あたり警備時間
  • 想定配置人数(所轄警察署との事前協議結果を反映)
  • 有資格者要件(検定1級・2級の必要性)
  • 業務報告書の頻度

Step 2:候補会社のリストアップ

  • 同地域・同工種の実績がある警備会社を5〜10社リストアップ
  • 警備業認定の有無・号区分の確認
  • 商工会議所・建設業協会・建設業者協会のネットワーク経由の情報収集

Step 3:相見積もり

  • 同じ業務仕様書で2〜3社に見積もり依頼
  • 比較軸:総額・単価・諸経費・割増・バックアップ体制・保険

Step 4:契約条件の確認

  • 契約期間と更新条件
  • 解約予告期間
  • 単価改定条項(労務単価改定・最低賃金改定との連動)
  • 損害賠償保険の補償範囲
  • 業務報告書の様式

Step 5:所轄警察署・道路管理者との協議反映

  • 道路使用許可申請に伴う警備員配置計画
  • 道路工事保安施設設置基準への準拠
  • 必要に応じて警備会社担当者の協議同席

Step 6:契約締結と業務開始

  • 業務仕様書・緊急時連絡体制図の受領
  • 工事開始前のキックオフミーティング
  • 業務開始後の業務報告書での日次・週次レビュー

契約上の注意点|労災・夜間割増・単価改定

工事現場特有の契約論点を整理します。

① 労災保険の確認

警備会社が 自社の警備員に対する労災保険 に加入していることが前提です。元請けと警備会社の労災区分は別扱いになるため、契約書・見積書での確認が必要です。

② 夜間・休日工事の割増

夜間工事・休日工事の警備員配置は 深夜割増・休日割増 が発生します。割増率は会社により異なるため、 夜間工事の見積もり時に割増後の単価で比較 するのが正確な判断につながります。

③ 単価改定条項

複数月以上の契約では、 労務単価・最低賃金の改定をトリガーにした単価改定条項 を契約書に明記しておくのが安全です。

  • 公共工事設計労務単価が一定割合以上改定された場合の自動改定
  • 最低賃金が一定額以上改定された場合の協議改定
  • 改定タイミング(毎年4月、最低賃金改定月の翌月など)

④ 業務範囲の明確化

  • 警備員が現場で対応する業務範囲(誘導・交通整理・搬入立会等)
  • 業務範囲外の依頼(資材運搬補助・清掃等)が発生した場合の取り扱い
  • 違法な指示(道路使用許可範囲外の交通遮断等)への対応原則

⑤ 報告義務と記録保管

  • 業務日報の様式
  • 事故・トラブル発生時の報告
  • 記録の保管期間(警備業法上の保管義務との整合)

工事警備に隣接する 交通誘導警備の費用構造交通誘導 警備 費用の決まり方と見積もりの読み方 で詳しく整理しています。労務単価の中期見通しは警備員労務単価2026年予測で確認できます。

発注検討時のチェックリスト

工事警備発注の実務チェックリストを整理します。

  • 警備業認定番号(都道府県公安委員会)が確認できるか
  • 2号警備(または1号・2号)の認定があるか
  • 同工種・同地域の実績件数を提示してもらえたか
  • 警備員指導教育責任者の選任があるか
  • 交通誘導警備業務検定保有者の在籍人数が確認できたか
  • 所轄警察署との協議経験があるか
  • バックアップ要員の配置体制があるか
  • 単価の内訳(労務・法定福利費・諸経費・利益)が説明されたか
  • 深夜・休日割増の率が明示されているか
  • 最低発注時間が明示されているか
  • 単価改定条項が契約書に明文化されているか
  • 警備業務賠償責任保険の補償額上限が確認できるか
  • 解約予告期間が工期に整合するか
  • 業務報告書の様式と提出頻度が要件と合うか

まとめ|工事現場の警備発注で損しない3原則

工事現場の警備発注は、最終的に次の3原則に整理されます。

  1. 業務区分と有資格者要件を明確化:1号・2号の判別と検定保有者の必要性
  2. 公共工事設計労務単価を相場の物差しに:民間請求単価は労務単価の1.3〜1.6倍が業界一般傾向
  3. 単価改定条項と保険補償の確認:労務単価上昇トレンドと現場リスクへの備え

工事警備は、所轄警察署との協議事項に組み込まれていることが多く、 早期発注と複数社比較 が工程・予算の両面で効きます。本記事は2026年6月時点の公開情報・業界一般論に基づきます。実際の発注では、必ず各警備会社の最新見積もりと所轄警察署・道路管理者の指導内容に基づいてご判断ください。